気紛れ日記

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管理人:竜胆 彩葉(りんどう さいは)


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片倉家 de バレンタイン

佐助は朝から大忙しだった。朝ご飯を作り、
「小十郎さん、起きて!政ちゃん、幸ちゃん!朝だよ、起きて~!」
寝室と子供部屋を回る。寝起きのいい幸村が政宗を起こしてダイニングにやって来ると、
「おはよう、政ちゃん!幸ちゃん!」
元気良く挨拶をする。
「おはようでござる、母上!」
「……はよ」
母のテンションの高さに幸村も釣られてウキウキとしだし、政宗のテンションは下がる一方だった。そうしていると、着替えて顔を洗った小十郎がやって来る。
「おはよう、小十郎さん」
「あぁ、おはよう」
おはようのキスをしている両親を尻目に、政宗は自分の分と幸村の朝ご飯の準備をしていた。サラダとスクランブルエッグとハムがプレートに並んでいる。スプーンとフォークを握り締めて待ちきれそうにない様子の小虎に呆れつつ、政宗はバターとジャムを冷蔵庫から取り出してテーブルにそれを置き、ふと気付いた。
「パンは?」
佐助を振り返ると、赤い顔をしながら慌ててトースターから焼けたパンを取り出した。朝から何をしているのかと呆れ返り、アツアツのパンにバターとジャムを塗って幸村に渡してやる。
「いただきます!」
「おぅ」
弟の世話をしてくれるしっかり者の長男の頭を撫で、佐助が笑みを浮かべた。
「ありがと、政ちゃん」
「ふん、政ちゃん言うな」
「もう、照れなくてもいいのに!チューしてあげる!」
「ぎゃああああ!やめやがれ!」
抱き締めて頬や額にキスをしてくる佐助を、悲鳴を上げながら必死で引き剥がす。すると、それを見ていた幸村が手を上げた。
「母上、それがしも!」
「はぁい、幸ちゃん可愛いね~!大好きだよ~!」
「それがしも母上が大好きでござる!」
「幸ちゃ~ん!」
スキンシップの好きな母が小虎とじゃれ合いだし、政宗はホッと安堵の息を吐いた。だがその次の瞬間、小十郎がにこやかに笑っている様を見て凍り付いた。
「おい、遅刻するだろ!早く食べろ、幸村!」
悪いと思いつつ政宗は弟を注意するしかなかった。
「遅刻?は、母上!」
「わぁ、大変!小十郎さん、遅刻しちゃうよ!」
「大丈夫だ」
「すぐコーヒー淹れるから!」
「あぁ、頼む」
ようやく佐助が動き出した。
小十郎と政宗を見送ると、佐助は幸村の準備を済ませて幼稚園へ送り届けた。

一人になると掃除と洗濯を済ませて、紙袋を取り出した。
「何と言っても、バレンタインは手作りだよね~。ホント便利なものが増えたよ」
水や卵を加えるだけで簡単に出来るチョコ菓子など、最近は便利なものが売られている。佐助は小さく笑って作業を開始した。


そうしていると時間はあっと言う間に過ぎていく。洗濯物を取り込んで畳み、タンスにしまう。夕飯の買い出しに行き、その先で会った友人と長話をするから余計だ。スーパーで小柄で華奢な美人を見付け、佐助は手を振った。
「就ちゃん!就ちゃん!」
「うるさい、聞こえておるわ」
嫌そうに顔を顰める元就に駆け寄り、佐助は早速作ってきたチョコ菓子を手渡した。
「はい、バレンタインチョコ。今回はブラウニーを作ってみたんだ。皆で分けて食べて」
「元親の分は要らぬぞ」
「え~、そう?ホットケーキミックスで作ったから大丈夫だと思うけど?」
それでも頭を左右に振る元就に、佐助は残念そうに元親の分を袋にしまった。すると、元就も袋から小さな包みを四つ取り出した。
「チョコではないがな」
「何作ったの?」
「塩豆大福だ。これなら元親も食べられるからな」
「へぇ~、覚えておくよ」
佐助が笑うと、元就が口の端を上げた。表情の乏しい彼がたまに見せるそんな笑みに佐助は見入ってしまう。
「あやつの為だけに別メニューを作るのか?構わぬから放っておけ。バレンタインは毎年気分を悪くして帰って来るのだ」
「何で?」
「甘いものが苦手な癖に現場で部下達と食べて帰って来るからだ。今日は静かに過ごせるであろうな」
「あはは、そうなんだ。親ちゃんらしいね。仕事してた時は就ちゃんも沢山もらってたんでしょ?いいなぁ」
そうして笑う佐助に元就は肩を竦めた。
「貴様も沢山もらっておるだろう」
「俺様は皆に配るから、そのお返しが多いだけだよ」
「…」
「なぁに?何でそんな顔するの?」
「……いや」
無自覚なのが一番性質が悪い。義理を義理と受け取らない勘違いがいる事を知らないのかと元就は呆れた。
「竜の右目が心配する訳だ」
ポツリと零した言葉を拾いきれずに、佐助が耳に手を当てた。
「え?小十郎さんが何?」
「……貴様に負けぬ勢いでもらって帰って来るのであろう?」
この言葉に佐助の顔が崩れた。
「そうなんだよ、毎年毎年!嫌がらせのように大きな紙袋にいっぱい詰めて!それもいくつも持って帰って来るんだよ!机に置ききれないからって!って事はもっと沢山もらってるって事だよ!小十郎さんの馬鹿~!」
「喚くな。大企業の専務ともなるとそれが当然だ。どうせ全て義理だ。諦めて開き直れ」
「うぅ~、それが美人秘書からでも?」
「そうだ。仮に、ただの一つももらって帰らねばどうする?貴様の選んだ男は誰にも相手にされず、誰からも感謝すらされぬのだぞ」
そんな男の様子を思い浮かべたのか、佐助がまともに引き攣った。
「うわぁ、それは嫌。小十郎さんは頼りになって、凄く優しくて……皆から慕われてるんだから」
「ならば胸を張っておれ。ジタバタする方が見苦しい」
「はぁい」
「ふっ。心配せずとも、本命であればきっぱりと断ってくる男であろう」
「えへへ、そうだね」
小十郎よりも佐助の方が余程無自覚で危ない。自分を軽く見過ぎる為に、相手の『好意』を『厚意』と受け取るのだ。悪く言えば鈍感なのである。そうして元就は内心呆れていたが、
「でも、就ちゃんは不安になったりしないの?親ちゃんが食べて帰るチョコに本命が入ってるかどうかも分からないんだよね……って、ごめん。今のなし。ごめんなさい」
佐助の言葉に動揺を隠し切れず、赤くなった顔を手で隠した。
「わ、我には関係ないわ!」
「うん、ごめんね」
「触るな!」
「大丈夫だよ。親ちゃんは就ちゃんの事が誰よりも大好きなんだから」
「……ふん」
こんな風に彼の表情が変わるのは元親の話の時だけだ。こつんと頭を合わせて佐助が笑った。
「就ちゃんは可愛いね~」
「貴様が言うな」
「え?俺様可愛いの?」
「さぁな」
今も昔と変わらず感情の表現が苦手な元就は、子供達と一緒になって遊ぶ佐助が羨ましかった。嬉しい時は笑い、哀しい時は涙を流す。そんな彼が羨ましかったのだ。それを察したのか佐助が柔らかい笑みを浮かべた。
「就ちゃんは可愛いよ。親ちゃんよりカッコ良くて男前だけどね」
「……褒めておるのか?」
「勿論だよ」
「そうか」
記憶は無くとも、多少なりとも理解してくれているのだろう。元就は小さく笑った。
「あ、もうこんな時間だ。ついでに幼稚園に迎え行く?俺様、戻ってたら政ちゃんが帰って来ちゃう」
「うむ」
「就ちゃんは豊臣さんとか半べちゃんに渡したの?俺様、まだ慶ちゃんにしか渡せてないんだよ」
「会えば渡すようにしている。わざわざ出向いてまでは……」
渡さない、と言い切る前に佐助がウキウキとしだした。時計を確認すると、今から家を回って帰って、夕食の支度にちょうどいいくらいの時間だ。迂闊な事を言ってしまったと、元就が前言撤回をしようとするのを拒否するように佐助が歩きだす。
「さ、行こう。チャッチャと回ればすぐだよ」
「だから、わざわざ出向いてまで……」
「就ちゃん、行くよ~」
「…」
こういう時は記憶がないのが本当に羨ましく思える。とは口に出して言えるはずもなく、元就は溜息を吐いて彼の後を追った。危険人物にまで無防備にチョコを渡しに行くのだ。無事に小十郎の元へ戻さなければ騒ぎになってしまう。
「貴様、織田とはどこで逢ったのだ?」
「どこって……道端」
「絡まれたのか?」
「違うよ。絡まれてるのを助けてもらったんだよ。就ちゃんも織田さんの事あんまり好きじゃないの?小十郎さんもいい顔をしないし……いい人なのに」
「……人……?」
苦悩する元就の様子を不思議そうに見つめ、佐助は首を傾げた。
「何でもない。行くのであろう」
「うん、ありがと」
「うむ」
元就の心配をよそに、佐助はチョコを配って回ったのだった。



か~!
不完全燃焼だけど、信長がちょろっと出せたからOKにしよう。ここでも光秀は一応医者設定なので、織田家の面々も医者にしようかと思います。

信長→院長
濃→婦長
乱丸→医者の卵

っと、あかん。これ以上ネタを出すとオフネタのみっちーシリーズにヒビが入る(笑)

小十佐ネタだと本当にイキイキとしてくれる瀬戸内。
背を押す役目が生きるのは彩葉の書き物の典型か……。
精進します。


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