気紛れ日記

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管理人:竜胆 彩葉(りんどう さいは)


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バハラタ東の洞窟 Lv.19 ②

アリアハンで用事を済ませ、勇者一行はボス戦に挑む。
バハラタ東の洞窟を地下二階まで一気に進んだ。重い扉を魔法の鍵で開けて先の部屋に進むと、人攫いの連中が数人出迎えてきた。
「何だおめぇ等は?ひょっとして、オレ達の仲間になりてぇのか?」
『はい』or『いいえ』
試しに『はい』を選んでみる。これで先に進めるのであれば、無駄な体力の消費を免れる。だが、
「お頭は今留守なんだ。出直して来な!」
では、最初から『はい』の項目はいらないのでは、と言う疑問は置いておいて、仕方ない、『いいえ』を選ぶ。
「じゃ、通す訳にはいかねぇな……やっちまえ!」
カンダタ子分×4との戦闘に突入した。
守備力減退や体力回復の呪文を使いこなす手強い敵なのだが、
「退屈させやがる……」
「良く頑張りましたね」
この最強タッグの前では、ザコの域を出ない。そうして更に先へ進むと、牢に囚われているバハラタのグプタと女性を発見した。
「助けて下さい!あたし、バハラタの町から攫われたタニアです!」
「突き当たりの壁に、この扉を開けるレバーがあるはずだ!どうか、そのレバーを!」
牢越しにグプタが叫んだ。見ると、壁に大きなレバーがある。ここまで来て、二人を放って行く馬鹿はいない。ソルはレバーを動かした。牢が開くと、グプタは通路を挟んで向こう側の牢へ走り出した。
「ああ、タニア!」
「ああ、グプタ!あたし達帰れるのね!」
「ああ、行こう!」
「有り難う、勇者さん!」
抱き合って喜び合う二人に、カイはソルを見上げて嬉しそうに微笑んだ。
「いい事をしたな、ソル」
「別に…あいつらに感謝されるより、俺は坊やから褒美を貰いてェぜ」
「私からの褒美?って、何を??」
尋ねて、カイはしまったという顔をした。読み通りだったのだろう。ソルがニヤリと質の良くない笑みを浮かべたのだ。咄嗟に逃げようとしたその時、
「きゃーっ!」
奥からタニアの悲鳴が聞こえた。カイは弾かれたように彼等の元へ走りだした。ソルは鋭く舌打ちしながら、その後を追った。
「ふっふっふっ。オレ様が帰って来たからには、逃がしやしねえぜっ!」
「助けて!勇者さん!」
「僕はどうなってもいい!どうかタニアを!」
見ると、出口を塞ぐように大男―カンダタ―が立っているではないか。
「うん?何だ、こんなヤツを攫って来た覚えは……。うぬぬ!誰かと思えば、またうぬらかっ!しつこいヤツ等め。だが、今度は負けはせんぞっ!」
カンダタ、カンダタ子分×2との戦闘に突入。
「ククク、クックックックック…テメェが俺を覚えているとはな…」
ソルが壮絶な笑みを浮かべて笑い出した。腹の底に響くようなその笑い声に、カンダタは竦み上がった。カンダタ子分×2は竦み上がった。カイは竦み上がった。
「いいところを邪魔してくれやがって、覚悟は出来てんのか?」
男の嘲笑に我に返ったカンダタが、怒りに震えながら叫んだ。
「ぐぬぬ、前のオレ様と同じと思うな!!やれ!お前達っ!!」
「は、はいぃ!!ルカナンッ!!!」
カンダタの命令に、子分達が怯えながらも守備力減退の呪文を唱えた。
「させません!スクルトッ!!」
即座にそれに対抗してカイが守備力増強の呪文を唱える。その隙に、ソルは刃のブーメランで全体攻撃を仕掛けた。
「こっちも、前と同じと思うな。坊や、先に厄介な子分共を叩くぞ」
凄絶な笑みを浮かべて敵を威圧する勇者に呆れつつ、カイは鋼鉄の鞭を握り締めた。守備力減退の呪文を唱えてくるとカイが呪文でそれを相殺し、勇者の全体攻撃と賢者のグループ攻撃で、回復呪文を掛ける間を与える事無くカンダタ子分×2を撃破した。残るはカンダタ一人である。
「これで邪魔者はいなくなったな。行くぞ、坊や」
「はい」
勇者が武器を鉄の斧に持ち替え、賢者も武器をルーンスタッフに持ち替えた。単体攻撃時には稀に会心の一撃が出るのである。
「二対一とは卑怯……ッ!!!」
「ふざけんな、元は三対二だろうが!!くたばれッ!!!!」
ソルの攻撃。会心の一撃。カンダタをやっつけた!
「参った!やっぱりあんたにゃ敵わねぇや……。頼む!これっきり心を入れ替えるから、許してくれよ!な!な!」
『はい』or『いいえ』
二度ある事は三度ある。『いいえ』を選んでみる。
「そんな冷たい事言わねぇでくれよ!な!な!頼む!これっきり心を入れ替えるから、許してくれよ!な!な!」
『はい』or『いいえ』
話が進まない。仕方なく『はい』を選ぶ。
「有り難ぇ!じゃ、あんたも元気でな!あばよ!」
カンダタが脱兎の如く逃走。その背中に蹴りでも入れそうな勢いだった勇者に、グプタが頭を下げた。
「あ、有り難うございました!このご恩は一生忘れません!さぁ帰ろう、タニア!」
「えぇ、あなた」
「どうか後でバハラタの町へ寄って下さいね。では…」
グプタはタニアを連れて歩いて行った。
「本当に仲のいい二人だなぁ……。あ、そうだ。胡椒を売ってもらわないといけないな。ソル、バハラタに戻ろう」
「……」
「ソル、行くぞ?」
せっかくのカイとの触れ合いを邪魔された上、それも無かった事にされてしまい、ソルのやる気がどーんと失せてしまっていた。いや、元々やる気の無い勇者ではあるのだが。そうして脱力してしまっている勇者に、賢者は小さく嘆息すると、
「はい、ご褒美だよ」
爪先立ちし、そっと勇者の唇に口づけた。
「さ、胡椒を持ってポルトガに行くぞ」
仲のいい恋人に中てられた賢者のそんな珍しい行動に目を丸くし、勇者は暫くの間動けずにいたのだった。


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バハラタ東の洞窟 Lv.19 ①

素っ飛ばしたイベントに戻って来た。誘拐された町娘を救い出す為に、敵の数が多い洞窟内を進む。
ソルが刃のブーメランで全体攻撃を仕掛け、カイが鋼鉄の鞭を振るいグループ攻撃を繰り出す。多少攻撃力が落ちるが、こういった多数攻撃出来る武器は、多勢に無勢の状況では重宝する。
「それにしても……同じ様な地形が続いて、今どこにいるのか分からなくなって来たよ…」
「シッカリしやがれ、元盗賊。この先に宝箱がある。先に全部集めるぞ」
ソルの言葉通り、通路を進んだ先に宝箱があった。それを開けながらカイは微笑んだ。
「勿論。それに、お金も貯金しに行かないと…」
「……またアリアハンに戻る気か?」
「うん、母上殿に賢者になったって報告もしたいし…」
「……………そうか」
嫌そうな勇者の様子を不思議そうに見ながら、カイが宝箱を開けた。
「痛ぁ―――――――ッ!!!」
「んだぁ!?」
突然悲鳴を上げた彼を見ると、宝箱に手を咬まれているではないか。以前にも似たような事があった。ソルは鋭く舌打ちし、武器を鉄の斧に持ち替えて斬りかかった。
「また人食い箱か!」
「ソ、ソル。どうしよう…」
ピラミッドで手酷い目に遭っている為か、カイが武器をルーンスタッフへ持ち替えながら、不安そうにしている。ソルは人食い箱を見据え、ニヤリと口の端を上げた。
「武器を構えろ、行くぞ」
「……で、でも…」
「余裕で勝てる。心配するな」
「…うんッ」
以前より二人は確実に強くなっているのだ。そして何より、
「スクルト!」
守備力増強の呪文を覚えたカイがいれば、怖い敵などいない。
「ゴタクはいらねェ!!!」
斧を振るい、ソルが人食い箱を一刀両断した。会心の一撃。カイがホゥッと感嘆の溜め息を零した。
「ククク、見惚れてねェで、次行くぞ」
「…み、見惚れてなんて…」
ゴニョゴニョと言葉を濁し、カイは火照る顔を押さえて男の後を追った。この戦闘のおかげでカイの人食い箱に対する苦手意識が消えた。こうして、罠を恐れる事無く全ての宝をひとまず集めると、二人は貯金の為にアリアハンへ戻った。大事の前の小事。せこかろうが何だろうが、二人旅ではこれが大切なのである。
「母上殿、ただいま帰りました!」
「良く戻った、カイ。ほぅ、その姿は…?」
銀行に金を預けて家に戻り、カイは旅の出来事を黒髪のギアに報告した。その間、ソルはつまらなそうに煙草を燻らせていた。そうして一晩家に泊めて貰い、翌朝カイはボス戦に備えて準備をしていた。
「カイ、あの馬鹿に酷い目に遭わされていないか?大丈夫か?」
「大丈夫です、母上殿。ソルは優しいですから」
「夜毎無理強いをしている訳ではない、という事か?」
まるで見ているのかと思うほど、この母親の言葉は直球である。カイは顔を紅潮させながら、どう答えていいものやらと迷い、言葉を探した。
「ええと……最後までは…しないので…」
「当然だ。今はかなり遠い所まで行っているようだが、何かあればすぐに戻って来るのだぞ」
母親はカイの身を案じて言った。カイはそんな黒髪のギアの優しい心遣いに感謝して、嬉しそうに微笑んだ。準備を終え、カイは煙草を吹かせて待っているソルの元へと向かった。
「ッたく、何であんな野郎と話が出来……ぉあッ!」
暴言を吐いている途中でソルが悲鳴を上げた。足元を見ると、使役獣が嬉しそうにソルの脚に噛み付いている。
「ふふ、母上殿は優しいよ。その証拠に、ほら。別れを惜しんでいるじゃないか」
「どこをどう見てそう思う!?」
「こんなにシッカリ噛み付いて、よしよし」
「ワザとか、テメェっ!!」
怒り狂うソルを尻目に、カイはペロッと舌を出して悪戯が成功したような笑みを浮かべて先に歩き出した。
「ッたく、いい加減に離れやがれ!!」
ソルが蹴り飛ばそうと脚を振り上げると、使役獣は危険を察して地中に逃げていった。そうしてようやく自由になったソルは、鋭く舌打ちした。
「何がしたいんだ、テメェは?」
尋ねると、地面から黒髪のギアが音も無く現れた。
「カイが賢者になり、益々貴様がここに寄り付かなくなるのはいい事だ」
「………そうかよ」
「だからと言って、私が何も知らぬと思うな。以前のようにあの子を傷付ける様な真似をした時は、容赦しない」
「いい加減に覗き見やめろよ。アイツを泣かせるような事はもうしねェ」
やれやれと肩を竦め、ソルは深い溜め息を吐いた。ロマリアでの一件の後、何かと使役獣の視線を感じていた。最終目的の為に、処理と銘打っての慣らしを行っている事も筒抜けなのだろう。
「あの子は貴様のような男を信頼しているのだぞ。それを…貴様は何だと思っている?性欲処理の道具ではないのだぞ」
「…」
「何故黙っている?答えられぬのか?」
「テメェは誰かを抱く為だけの理由で、魔王をあの世に叩き帰す気になるか?」
逆に訊き返され、黒髪のギアは口を閉じた。面倒事を嫌い、やる気を見せない男が、その理由の為だけに旅を続けているのである。
「別に勇者と認めて貰いたい訳でも、感謝されたい訳でもねェ。アイツを抱きたいだけだ」
「そんな理由で倒される魔王の身になれ。情けないだろう」
「知った事か。サッサとバラモスをぶちのめして、アイツを抱く」
一晩カイに触れていない男は欲求不満のようだ。母親は痛む頭を押さえた。
「愛しているのならば、もう少し思い遣ってやれ」
「ふざけんな、毎晩寸止めしてんだぜ。これ以上我慢出来るか」
「それをやめろと言っているのだ」
「目の前にある揚げ立てポテトを食うなと言われてるもんだぜ」
「……う、そうか…」
母親が口籠り、この口論はソルの勝利に終わった。そんな話題の彼は、遅い勇者を心配して待っていた。
「遅いなぁ、ソル……。久し振りの母上殿だから話し込んでいるのかな?仲がいいからなぁ」
賢者になっても、カイはカイであった。


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バトン回答②

引き続いて、バトン回答を…。
相方である、神原様がアンカー宣言を撤回して
回してきてくれたので(笑)
頭を抱えつつ、書いてみました。
さて、では行ってみましょうか。

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バトン回答①

眠りこけ過ぎで、ゲーム日記が飛んでいるので、
息抜きでバトン回答を持ってきました。
書かねばと思って、そのままになっていた分です。
まずは緑野様から頂いたバトンです。
では行ってみましょうか。

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ダーマの神殿 Lv.20~ガルナの塔 Lv.21

バハラタ東の洞窟を素通りし、その北のダーマの神殿にやって来た。だが、まだ悟りの書を取っていない為、セーブだけとって北のガルナの塔へ向かった。
「うわぁ、皆賢者になる為に修行をしているんだな」
カイが感嘆の声を上げた。塔内には賢者になる為に修行をしている人々がいた。
「心配しなくても、この塔から書を取って帰る頃には、坊やは一人前の盗賊になってるだろうぜ」
「…うん。薬草は沢山持って来たから、上階で強い敵に会っても大丈夫だからな。確実に攻略して行こう」
気合を入れるカイを横目に見やり、ソルは満足そうに笑った。
「真面目なのはいいが、面倒事はごめんだ。付いて来い」
「え?ちょっと待て、どこに行くんだ」
カイは迷う事無く歩いて行くソルの後を追いかけた。塔一階を突っ切り、離れの階段を上がっていく。その後ろを歩くカイは内心で感心していた。
「ソルは良く知っているな。いつ調べているんだ?」
「クックック、さぁな」
「はぐらかさずに教えてくれ。私も見習うから」
「見習うもんでもねェぞ」
カイがいくら尋ねても、ソルははぐらかし続けて何も明かさなかった。そうして塔の最上階まで登りきり、そこにあった宝箱を期待たっぷりに開けたのだが、中身は銀の髪飾りだった。
「ソル、悟りの書がない。これじゃ賢者になれないよ。どうしよう……」
カイが肩を落としてしまった。既に転職可能レベルにまで達しており、これ以上経験値を稼いでも意味がない。そんな彼の頭をポンポンと軽く叩いてやり、ソルは目を細めて笑った。
「心配するな。5階に張られてたロープから、4階中央に降りた先にある」
「何だ、そうか……良かった」
ホッと安堵の息を零し、カイが笑みを浮かべた。悟りの書と全ての宝箱を手に入れると、ソルは移動呪文を唱えてダーマの神殿まで戻ってきた。悟りの書をカイに手渡し、他の者には目もくれずに神官の元へ向かう。
「ここは転職を司るダーマの神殿。職業を変えたい者が来るところじゃ。転職をご希望か?」
『はい』or『いいえ』
ようやくこの時が来たのだ。勿論『はい』を選ぶ。
「どなたの職業を変えたいのじゃ?」
誰を。ソルorカイ。
「はい、私です」
「カイがなりたいのはどの職業じゃな?」
色々あるけれど、賢者を。
「カイは賢者になりたいと申すか?」
『はい』or『いいえ』
「宜しくお願いします」
「おお!切れ者のカイには転職とも言えるナイスチョイスじゃのう。一度レベル1に戻り、修行をし直す覚悟もおありじゃな?」
『はい』or『いいえ』
「えぇ」
「おお、神よ。カイが新たな職に就く事を何卒お許し下さい!」
カイは盗賊から賢者に転職した。
「宜しい。では、今からカイは賢者じゃ!カイの装備は新たしい職業のものに変えておいたからな」
この時、カイは『あっ』とある事に気が付いた。バハラタの町で購入した黒装束は武闘家と盗賊のみが装備可能で、カイが不要と思った身かわしの服は全ての職業の者が装備出来る防具だった。ソルが置いておくように言った事の意味をここでようやく知り、カイはフッと密かに微笑んだ。
「他にも転職したい者はおるかな?」
『はい』or『いいえ』
「あ?二人しかいねェんだが…。じゃあ俺も……」
「愚か者め!勇者をやめたいと言うのか?それだけはならんっ!」
「他にも転職したい者はおるかな?」
『はい』or『いいえ』
「………どつくぞ?」
「うわわ、よせ!ほら、もう行こう」
「ではゆくがよい」
カイはソルを引っ張り、ダーマの神殿を後にした。そんな彼を見下ろし、ソルは満足そうに笑みを浮かべた。
「坊や、装備出来なくなった刃のブーメランを貸せよ。それから、袋の中にアリアハンからパクって来たルーンスタッフがあるだろ。敵が一匹の時はそれで殴れ」
「え?でも、鋼鉄の鞭と攻撃力は一緒だよ?道具として使っても何の効果もないのに……」
「その内分かる」
「……う、うん…分かった」
武器の交換を行い、レベル上げに励む事にした。そうして戦闘を繰り返す内に、カイはソルの言葉の意味を知る事となった。複数の敵が出てくると、ソルは鉄の斧から刃のブーメランに装備を変更し、全体攻撃を仕掛けて弱い敵を一掃する。その戦い振りに目を奪われつつ、カイはグループの敵には鋼鉄の鞭で、単独の敵にはルーンスタッフで攻撃をした。同じ攻撃力の武器でも、単体攻撃時には稀に会心の一撃を繰り出せるのだ。確率の問題ではあるのだが、それで少しでも戦闘が楽になるのであれば、活用する価値はある。
(やっぱりソルは凄い)
カイは覚えたての呪文を使い、ソルを援護しつつ、杖を振るって敵を殴り飛ばした。二等分の経験値だと上がるレベルの数も多い。カイは見る見る成長し、ソルを満足させた。
「これで俺は攻撃に専念出来る。守りは任せたぞ、カイ」
「!う、うんっ!役に立てるように、頑張るよ」
「クックック、あぁ」
こうしてようやく攻守が決まり、勇者一行の強さは今までとは比べ物にならないものとなったのである。


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ポルトガ Lv.17~バハラタ Lv.18

ロマリアより西に位置する小さな国、ポルトガ。まずは武器防具屋で装備を整え、セーブの為に城へと向かった。例の如く、他の者には目もくれずに王の下まで進んでいく。いい加減、町の人に話し掛けてやろう。と、そんな事を思わない勇者一行である。
「遥か東の国では黒胡椒が多く取れるという。東に旅立ち、東方で見聞した事をわしに報告せよ。胡椒を持ち帰った時、そなたらを勇者と認め、わしの船を与えよう!この手紙を東の洞窟に住むノルドに見せれば、導いてくれるはずじゃ」
ソルは王の手紙を受け取った。
「ではゆけ、ソルよ!」
セーブを取りたかったのだが、何やら面倒事を有無も言わさずに押し付けられたようだ。仕方なく、もう一度話し掛ける。
「おや、どうしたと言うのだ?わしは黒胡椒を待っているぞ。わしは忙しいので、他の話ならそこの大臣にな」
王族の傲慢さが良く出ている王である。頼みという名の命令。これならまだ千歩譲って、我慢もしよう。だが、頼むの一言もなく、船と胡椒の物々交換を突然持ち掛けてきたのである。
「別に勇者と認めて貰いたい訳じゃねェんだがな…」
「でも、船は必要だから東に向かうぞ。アッサラームから少し北にある洞窟だ」
アッサラーム。ベリーダンスが名物の、砂漠への拠点の町だった。ソルは顔を顰めて懐の煙草に手を伸ばした。
「……たらい回しじゃねェか」
「そう言うな。船さえ手に入れたら、二度と訪れない国だ」
「坊やは真面目な顔して、えげつない事言うよな」
楽しそうに笑うソルの背中を小突き、カイは厳しい口調で言った。
「平和ボケしている国王ばかりで、呆れてるんだ」
「そんな馬鹿共、放っておけ」
「偶にでいいから、勇者らしいセリフを言ってくれ」
「ククク、言って欲しけりゃヤらせ……ぅお!」
ソルの背中に跳び蹴りを食らわし、カイはサッサと洞窟へと向かったのだった。

洞窟を進むと、一人のホビットがいた。
「わしはホビットのノルド。旦那方は何だね?さっ、出てゆきなされ!」
話を聴く耳も持っていない。仕方なく、ソルは王の手紙を読んだ。
『親愛なるノルドよ。この手紙を持つ旅人をバーンの抜け道へ案内してやってくれ。ポルトガの王より』
「ふむ!すると、旦那方は東へ行きたいのかね?」
『はい』or『いいえ』
「別に行きたい訳じゃねェんだがな…」
「それじゃ、わしが旦那方にしてあげられる事は何もないですな」
「この馬鹿!下がれ!!」
アッサリと引き下がるノルドに、慌ててカイが交渉役を買って出た。
「まだ何か用かね?わしに出来るのは東への抜け道へ案内する事くらいだが」
『はい』or『いいえ』
「えぇ、お願いします」
「ふむ!すると、旦那方は東へ行きたいのかね?」
『はい』or『いいえ』
「そうです」
「ふむ!他ならぬポルトガ王様の頼みとあらば…さ!付いて来なされ」
カイはホッと胸を撫で下ろし、ソルを連れてノルドの後をついて行った。
「ふむ!そこで待っていなされ」
「ふむふむ、うるせェヤツだな」
「しっ、口癖なんだろう」
密かに耳打ちし合う間に、ノルドが壁に体当たりして壁を崩した。
「さ、お通りなされ!これがバーンの抜け道への入り口じゃ」
隠し通路を開けてもらい、勇者一行は東の地へと向かって洞窟を進んだ。洞窟を抜けると、すぐ南にあるバハラタの町へ向かった。新しい拠点に辿り着いてまず先にするのが、装備を整える事である。
「黒胡椒?それならこのすぐ南の店で売ってるよ。それより…ここは武器と防具の店だ。どんな用だい?」
ついでに胡椒の店も教えてくれた。
「黒装束を買ったから、もう身かわしの服はいらないな。売ってしまおう」
「いや、置いておけ。後々、必要になる」
「……え?でも…」
「いいから、置いておけ」
珍しくソルが店で口を出してきた。何か理由があるのだと察し、カイは素直に身かわしの服を道具袋に入れた。
「よし、じゃあ胡椒を買ってポルトガへ戻ろうか」
意気揚々と南の店へ入ると、カウンターに誰もいない。カイは中にいた剣士に話し掛けた。
「私は胡椒を買いに来た。だが、娘を攫われたとかで商売をしてくれない。困った事だ」
「困ってんのは、テメェの頭の方だ」
「……は?」
「うわわ、失礼しました!!」
剣士に面と向かって暴言を吐く勇者を引っ張り、カイは店を飛び出した。
「まったく…気持ちは分からないでもないけれど、喧嘩を売るんじゃない」
「あぁあぁ、好きにしやがれ」
面倒臭がりの勇者が、次々と起こる面倒事にウンザリとしている。そんな勇者を引っ張り、カイは店の裏側で何やら切羽詰まった様子の青年と老人を見掛けた。
「ああ、タニア…。僕の愛しき人……」
「旅の人、まぁ聞いて下され。わしの可愛い孫娘、タニアが悪党どもに攫われてしまったのじゃ。そこにおる若者がタニアの恋人のグプタ。わしは二人を結婚させ、店を任せようと思ったのに…。あんたらは強そうじゃな。どうか、タニアを助け…」
「僕が行きます!」
グプタが老人の声を遮って言った。カイは驚いて青年に視線を向け、ソルは感心したように口の端を上げて笑った。
「見ず知らずの旅の人に頼むなんて……待ってて下さい。きっとタニアを助け出してきます!」
言いたい事を言いたいだけ言って、グプタは走り出した。
「グプタ!…おお!この上グプタまで捕まったら、わしは…わしは……」
話しかけても、そうして老人は途方に暮れており、二人はそっと傍を離れた。
「ソル、彼の後を追い駆けよう。危険だよ」
「……あぁ、まぁ、そうなんだがな…」
「?何?」
「坊や、俺のやり方に付いて来る気はあるか?」
唐突の問い掛けに、カイは首を傾げてソルを見上げた。
「盗賊として、お前はもうすぐ一人前だ。だが、ここから先はそれじゃ通用しねェのは分かるな?」
「……それは…」
ソルの指摘に、カイは言葉を詰まらせた。中盤に差し掛かってくると、敵も段々強くなってくる。既に中型のモンスターも多数出てきており、薬草での回復が追いつかなくなってきているのだ。
「先に賢者に転職しろ。今のお前の頭ならすぐに呪文も覚える。ここの敵ならすぐにレベルも上がる。無駄に盗賊で経験を積むより、その方が効率的だ」
ソルの提案に耳を傾けながら、カイは誘拐された町の娘と、それを救出に行った青年を思った。
「今、助けに行ったとして、無事に助け出せる確率は……どれくらい見てる?それから、転職して行った場合は…?」
「このままだとゼロだ。転職してある呪文を覚えたら、確実だな」
「………分かった。ダーマの神殿に向かおう」
ソルの読みの的中率は高い。要所要所でのこの男の判断で、幾度となくカイは助けられてきたのだ。見上げるカイの揺ぎ無い信頼の眼差しに、ソルは口の端を上げて笑うと、そっと口づけを落とした。町の真ん中で、しかも周りの目も気にしない男の行動に、カイは飛び上がって驚き、男を殴り飛ばしたのだった。


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イシス Lv.15~寄り道中 最長要注意警報発令~

新しい鍵を見付けたら、原点に戻って片っ端から宝箱を頂いていく。これがRPGの鉄則である。そうして、アリアハンから宝箱を漁っていき、イシスへと戻ってきた二人は、早速城の地下にある宝箱を探しに行った。
「坊や、罪状は何だ?」
「言うな。これも全ては世界の為だ」
「クックック、坊やに捕まった罪人の言い訳がそれになるな」
「……嫌なヤツだな…」
むくれるカイに笑みを誘われつつ、ソルは鍵の掛かった扉をあけて部屋に入り、宝箱を開けた。星降る腕輪を見付けた。
「私の眠りを覚ましたのはお前達か?」
『はい』or『いいえ』
骸骨が現れた。『はい』と返事を返し、ソルとカイは戦闘態勢に入った。ピラミッドでのミイラ男×4の12連戦は記憶に新しい。
「では、その宝箱の中身を取ったのもお前か?」
『はい』or『いいえ』
「だったらどうする?」
「お前は正直者だな。宜しい。どうせもう私には用の無いもの。お前達にくれてやろう。では…」
骸骨は消えていった。宝箱を蹴り飛ばし、ソルがフンと鼻を鳴らした。
「いいえと答えて、殴り倒してやれば良かったか…」
「あはは、余計な体力を使わなくて良かったじゃないか」
そうして地下から出ると、ソルは時間を潰して夜を待った。夜の城に何の用があるのか疑問に思いながらも、カイは勇者に従った。
夜の帳が降り、静まり返る城内を進み、玉座へやって来た。当然の如く、美しい女王は既に寝室に上がっている。
「……ソル…もしかして……?」
玉座の間から寝室に上がる扉は、魔法の鍵で開ける事が出来る。カイは嫌な予感がした。扉の前でニヤリと笑みを浮かべた勇者に、カイは柳眉を逆立てた。
「この馬鹿!戻るぞ!一体何を考えているんだ!!」
「夜の方がやり易いからな」
この言葉に飛び上がって驚き、カイは真っ赤になって男を扉から引き離そうとした。
「許さないぞ、ソル!この国の女王だぞ!もし、お前の国と諍いでも起きたら、どう責任を取るつもりだ!!」
真面目な青年がどういう考えに至っているのかに気付くと、ソルは口の端を上げて笑った。
「そんな大層な話にゃならねェよ。心配するな」
「ば、馬鹿!女性の寝室に上がる事自体が問題なんだ!早く帰ろう!」
ソルは慌てふためくカイの唇にそっと口づけると、驚いて動きを止めた彼との立ち位置を瞬時に入れ換えた。
「……あ」
その先は緊急脱出用の出口だった。
「クックック、俺を止めたきゃ急げよ」
勝ち誇った笑みを浮かべるソルに、罵声を浴びせながらカイが落ちて行った。
「アイツの脚は速ェからな…。急ぐか」
ソルは魔法の鍵を使って扉を開けると、女王の寝室へ上がって行った。
「何用かは知りませぬが、お引取り下さいませ。あらぬ噂が立ちますわ」
女王の傍に仕える女官の一人が厳しい口調で言ったが、女王に手で制されると、そっと男に道をあけた。寝台へと進むと、女王が艶やかな笑みを浮かべた。
「人目を忍んで私に会いに来てくれた事、嬉しく思いますわ。何もしてあげられませんが、あなたにささやかな贈り物を差し上げましょう。私のベッドの周りを調べてごらんなさい」
言葉通りベッドの周りを調べると、何やら小さい物が落ちている。ソルは祈りの指輪を手に入れた。ニヤリと笑みを浮かべる男に、女王はニッコリと笑みを深めたが、女官達はそんなやり取りを理解出来ずに慄いている。怯えて部屋の隅まで逃げて、体を震わせる者までいた。
「ソルッ!!」
そんな中に、カイが俊足を飛ばして駆け込んで来た。
「きゃーっ!また男よ!!」
「も、申し訳ございませんッ!すぐに退出致しますので、どうかご容赦下さい!!」
女官の悲鳴に我に返ったカイは、顔を真っ赤にして深々と頭を下げた。肌の露出の多い砂漠の国の女官達の寝間着は、カイにとっては過激なものだったのだ。そんな様子を見ていた女王がソルに視線を投げた。
「さぁ、もうおゆきなさい」
「有り難く頂いておく」
祈りの指輪を放り投げて掴み直すと、ソルはサッサと女王に背を向け、カイに向かって歩き出した。
「戻るぞ、坊や」
目のやり場に困っているカイの腕を引き、ソルは一直線に階段を下りて行くと、緊急用の出口から身を躍らせた。
「何も問題を起こしてないだろうな?」
「あぁ、誰かの所為でそんな時間も無かったしな」
「当たり前だ!お前のおかげでこっちは汗だくなんだぞ!!」
言葉通り彼の呼吸は乱れ、柔らかい金の髪が汗で頬に張り付いていた。全力疾走して来たのだろう。
「そうか。なら、綺麗に身体を洗ってやるよ」
町へ向かう途中で泉を見つけると、ソルはカイを連れて強引に進路を変えた。
「く、くすぐったい!馬鹿、腰を触るな!」
「クックック。さぁ、どうしてくれようか…」
「……え?」
腰を触る手が明確な動きをし、カイは身体を硬くしてソルを見上げた。
「俺と女王がいいと思ったら、それで成立する話だったんだ。それをお前は邪魔しに来たんだぜ」
「そ、そんな簡単な話じゃないだろう!?」
「ガキが、一夜だけのやり取りもあ……」
「そんなのないッ!!そんなの間違ってるッ!!!」
言葉を遮り、カイは鋭くソルを睨んだ。そんな彼の様子で、未だに勘違いをしているのだと確認すると、ソルはポケットから指輪を取り出した。
「…それは?」
「女王がくれた指輪だ」
「………ッ!!」
明らかにカイが動揺した。
「ッたく、お前のおかげでゆっくりと礼もせず仕舞いだ」
わざとらしく盛大に溜め息を吐くと、カイが傷付いたような表情を浮かべて俯いた。
「……ソルは女王の事が好きなのか?」
「頭のいい女だからな。嫌いじゃねェぜ」
「嫌いじゃないって事は、好きなのか?そ、その…夜を一緒にいたいと思うくらい…?」
「ハッ、分かりきった事を訊くんじゃねェ」
カイが口を閉ざした。わざわざソルが夜を待ったのだ。その為に行ったと知れる。
「サッサと服脱げよ。汗だくなんだろ。身体洗ってやるから……」
「一人で出来る!この馬鹿!!最低男!!!」
「何怒ってやがる。またガキの嫉妬か?」
「……ッ!!嫉妬なんて…っ」
服を脱ぎ捨て、カイが泉に飛び込んだ。水飛沫に目を細め、ソルはやり過ぎたかと苦笑を零して彼の後を追った。
「ついて来るな!」
「ッたく、…おらよ」
ムキになるカイの手を取り、ソルはその指に祈りの指輪をはめた。
「…?」
意味が分からず、カイは指輪と男の顔を交互に見やる。
「祈りの指輪。魔力を帯びた指輪で、指にはめて祈ると魔法力を回復出来るが、壊れてしまう事もある。貴重な道具だ。坊やは女王に礼も言わなかっただろ」
この説明に、カイの顔が見る見る真っ赤に染まっていった。やられた。ようやくその事に気付いたのだ。ニヤニヤと笑う男が憎らしい。
「ゆ、指輪の事を知っていたんだなッ!!」
「あぁ、落ちてる場所の記憶が曖昧だったんだ。だから、夜の方がやり易いと言っただろうが」
パクパクと口を動かし、カイは何も言えなかった。ソルはカイに宝の数を読ませると、辺りをつけて足元を良く調べていた。そうして隠してある宝物を見つける的中率は、盗賊の財宝発見の能力など必要ないくらい、かなり高いのだ。
「まだ坊やはレミラーマの呪文覚えてないだろ。文句言うな」
「意地悪ッ!!最低勇者ッ!!!ホントに嫌なヤツッ!!!」
「ククク、そんなに俺が好きか、坊や?」
「大ッッ嫌いだッ!!!!」
真っ赤になって動悸の激しくなっている胸を押さえているカイの手を掴み、ソルはそっと腕の中に抱き寄せた。逃げようとしない彼に目を細めて笑うと、男は触れるだけの口づけを落として優しく抱き締めた。


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ピラミッド Lv.16

勇者一行は再びじりじりと照りつける太陽の下、砂漠を北上してピラミッドへとやって来た。先人の偉業の結晶、ピラミッド。内部はひんやりと涼しく、狭い入り口を進むと、中は天井が高く広かった。
「うわ~、思ったより広いなぁ」
「こりゃ攻略が面倒そうだぜ」
「うん。仕掛けも沢山あるみたいだから、気を付けて……」
カイはセリフを全て言い切る事が出来なかった。ソルの姿が一瞬の内に掻き消えたのだ。
「うぉおあ!?」
「うわ――――ッ!ソルッ!!!」
勇者は落とし穴に落ちた。
「馬鹿―――――ッ!!言ってる矢先に落ちるヤツがあるか!!!…はっ!」
ソルが落ちた穴に向かって大声を上げ、カイはハッと我に返った。ピラミッドは魔物の巣窟。侵入者の存在に気付いた魔物が近付いて来たのだろう。殺気が辺りを包み込み、カイは慌ててソルの後を追って落とし穴に飛び込んだのだった。

気を取り直して、TAKE2
まっすぐ進むと落とし穴の罠がある為、多少遠回りをして先に進んで行く。
「あ、宝箱だ」
さすが盗賊。目敏く宝箱を見付け、開けた。だが、空っぽ。既に荒らされた後だった。
「クックック、こんな入り口の宝箱になんぞ期待してんじゃねェ」
「う……、でも、掘り出し物があるかも知れないじゃないか」
カイが片っ端から宝箱を開けていく。すると、
「痛ぁッ!!!」
カイが悲鳴を上げた。
「んだぁ?」
振り返ると、カイが宝箱に手を咬まれているではないか。ソルはギョッと目を剥いた。
「人食い箱ッ?何でこんな所にいやがる!?」
ソルが叩き斬ろうとすると、人食い箱はヒラリと逃げてかわした。自由になったカイは、状況を飲み込めないままに体勢を立て直す。
「え?何!?モンスター??」
「逃げるぞ、坊や!今の俺達じゃ相手にならねェ!!」
「う、嘘…っ!?」
「走れ!殺られるぞ!!」
ここはゲーム序盤のピラミッド。中盤から終盤のレベルの人食い箱を倒すのは、今の彼等には不可能だった。人食い箱が甘い息を吐き、勇者と盗賊が眠りに落ちた。つまり、死亡確定。

何度でも挑戦、TAKE3
先に進む。他のものには目もくれず、魔法の鍵を取りに行く。寄り道をするから、失敗をするのである。
「一度に出てくる敵が多いなぁ。こっちは二人しかいないのに…」
「あぁ、仲間を呼ばれるのが一番痛いな」
仲間を呼び、痛恨の一撃を繰り出すマミー。睡眠の呪文を使う大王ガマと一緒に出てくると脅威である。そう思うと出てくる、世の無情。二人に正しく危機が訪れた。
「く…不覚…」
ソルよりも呪文耐性が低いカイが眠りに落ちた。鋭く舌打ちし、ソルが敵に真っ向勝負を挑もうとした。が、常に多勢に無勢なのだ。その上、仲間を呼ばれたら、正しくタコ殴り状態である。
「調子に乗りやがってェ!!!!」
勇者が怒り狂う気持ちが分かるだろうか。自分やカイを回復している間に仲間を呼ばれ、攻撃に移ろうとしたら眠らされてボコボコに殴られ、なす術が無い。運が悪いのか、痛恨の一撃までまともに食らい、目も当てられない。どうしろと言うのか。だが、仏の顔も三度まで。ソルの表情が変わった。

レベルは低くない、と思う。レッツ、チャレンジ!TAKE4
ここまで来れば、後は運の問題だ、と思う。出てくる敵の種類と数。寄り道せずに、罠に引っ掛からずに、先に進むべし、進むべし、進むべし!
「ようやく三階だ!あの大岩のカラクリを解けば、鍵が手に入るぞ!」
カイの表情に笑顔が浮かんだ。だが、ソルは表情を変える事無く、イシスの城で手に入れた情報を元に、カラクリのスイッチを押していった。
全てのスイッチを押し終わると、どこからか重い岩の動く音がした。
大岩に閉ざされていた部屋に置かれていた宝箱を開けた。
なんと!魔法の鍵を見付けた!
「やっと手に入れた…。さ、早くこんな所出てしまおう」
道具袋の中に鍵をしまい、カイは上階を目指すソルを追った。ここまで来れば、下に降りるよりも先に進んで、外に出た方が早いのだ。早速手に入れた魔法の鍵を使って4Fに上がると、沢山の宝箱が置いてある部屋に出た。
「凄い、王の棺だ…」
「ここの宝はまだ誰も手を付けていないみてェだが…?」
「勿論、貰って行くぞ。今までの失敗のおかげで、沢山出費したから」
「…ッたく、しゃあねェな…」
張り切って部屋に入って行くカイの後を追い、ソルはやれやれと肩を竦めた。
ソルは宝箱を開けた。どこからともなく、不気味な声が聞こえる……。
「……王様の財宝を荒らすものは誰だ。我らの眠りを妨げるものは誰だ…」
ミイラ男×4が現れた。
「うわぁ…何て解り易い展開…」
「ウゼェ…」
敵を倒すと宝箱の中身を手に入れられるのだが、その為にはミイラ男×4を12回こなさなければならなかった。
「ウゼェッ!!いい加減にしやがれ!!!」
ミイラ男を蹴り倒し、ソルが吼えた。気が長い方ではない男が、ここまで付き合ったのが奇跡か。カイは苦笑を零した。
「ここをクリアしたら西の地へ行けるようになるんだ。武器を買うお金も必要だし、ここ以上の強い敵が出て来るんだから、貰える物はシッカリと貰っておこう」
この階の全ての宝箱を失敬し、勇者と盗賊は何とかピラミッドの攻略に成功したのだった。


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イシス Lv.15

砂漠を抜けてようやく緑に辿り着いた一行は、早速水を探して歩いた。
「冷たい水はいかが?水は私達の宝ですわ」
広場で井戸の水を配る女性がいた。
「確かにここの水が枯れてしまったら、このオアシスも砂に埋もれてしまうだろうな」
「地殻変動か異常気象でも起こらない限り心配する事でもねェ。それより、水」
「あはは、よっぽど暑かったんだな。私が貰ってくるよ」
カイが水場へと向かい、ソルは日陰に入って一息吐いた。そこでは照りつける太陽を避けて涼む街の人々が、他愛のない会話をしていた。
「ここは砂漠の国、イシス。今は亡きファラオ王の作った国です」
ソルは国名を教えてくれた吟遊詩人の言葉に首を傾げた。
「ファラオが名前か?バグってんじゃねェだろうな…」
「バグ…??」
「いや、何でもねェ。じゃあな」
禁句を思わず零してしまい、ソルはそそくさと人気のいない所へ逃げ出す。適当に街を歩いていると、剣士が声を掛けてきた。
「この国を治めているのはとても美しい女王様だ。お主も女王様が見たくて遥々やって来たのだろう」
「ざけんな、誰がそんなモン目当てで鉄板焼きになんぞなるか」
暑さで気が立っているのだ。ソルは剣士を殴り倒したい衝動に駆られた。
「あ、いたいた。勝手に動き回らないでくれ。捜すのが大変じゃないか」
カイが水を持ってきた。すると、彼を見た剣士が口笛を吹いて、質の良くない笑みを浮かべた。それに気付いたソルは即座に駆られた衝動に従い、剣士を殴り倒した。驚いたのはカイだ。
「うわ―――っ!!馬鹿、何してる!!!」
「クックック、虫を叩いてやっただけだ」
「暑さでおかしくなったのか??ほら、水飲んで落ち着け!!」
水をソルに渡すと、カイは剣士の容態を診た。大きなコブが出来ているが、大事ではない。カイは日陰へ剣士を引き摺って行くと、柳眉を吊り上げてソルを睨んだ。
「全く!何を考えているんだ!!」
「大丈夫だ。ある程度の加減はしてやった」
「ある程度って何だ!手を上げる事自体間違っているんだ!」
「そうか。それより、女王の顔でも見に行くか。美人らしいぜ」
楽しそうな男に、一体何をしに来たのかと、カイは痛む頭を押さえた。
「セーブ取るついでだ」
「……そういう事にしておきます」
長い溜め息を吐くと、カイは後ろ髪を揺らして歩く男の後を追った。
城の中には多くの女官が働いていた。砂漠の国ゆえか、肌の露出が多いその姿に、カイは目のやり場に困っているようだった。一方ソルはそんな城内を見回し、口の端を上げて笑った。
「いい国だ」
「スケベ!」
「野郎なら当然だ」
「……もういい」
階段を上がり、一直線に女王の下へ向かった。
「皆が私を褒め称える。でも、ひと時の美しさなど、何になりましょう。姿形ではなく、美しい心をお持ちなさい。心には皴は出来ませんわ」
カイは思わず女王に目を奪われ、珍しくソルも感嘆の息を吐いた。
「あなた方の旅の無事を祈っていますわ」
セーブを取り終えると、ソルは迷わず意味深な歌を歌う子供を捕まえた。
「東の西から西の東へ。西の西から東の東」
必要なキーワードを聞きだすと、ソルは子供を放り投げて、ピラミッド攻略の情報を集めるカイの元へ戻った。男の言葉をカイがメモっていると、女官がやって来た。
「子供が歌うわらべ歌にはピラミッドの秘密が隠されているそうですわ。でも、あたしには何の事やらさっぱり」
お手上げのポーズをする女官を、ソルは鼻で笑い飛ばした。
「だったらテメェもピラミッドに連れて行って……ぉあ!」
「大変失礼しました!では!!」
カイはソルを引っ張り、慌ててその場を離れた。時折この勇者は恐ろしい事を口走る。
「さぁ、ピラミッドへ向かうぞ」
階下へと向かう階段の傍に控えている兵士達は、警備をしていると言うより、女王を見ているだけの様に見えた。
「女王様をお守りするのが私の役目。ああ、私は何て幸せな男だ!」
「オレは女王様の為なら死ねる!ああ、女王様……」
確かに女王は美しかった。今までの王が不細工だった事を差し引いても、目の保養になった。
「心配しなくても、坊やの方が美人だぜ。胸を張れ」
ソルが楽しそうに笑い、カイは柳眉を逆立てた。
「馬鹿にして!美人なんて言われても、嬉しくない!!」
「そうか?坊やが流し目したら、敵が見惚れて止まるぜ」
「流し目は遊び人の技だろう!私は盗賊だ!!それとも、賢者じゃなく、遊び人に転職して欲しいのか??」
「クックック、遊び人なら女の方が……」
ソルが途中で言葉を切り、何かを考える仕草をした為に、カイは思わず罵声を飲み込んだ。何か考えがあるのかと、黙って男の言葉を待つ。
「坊やを女で選んでりゃ良かったか…」
「……え?」
「この資料見てみろ。女の露出度が高い……うぉおあ!」
本日二度目の雷。勇者と武闘家以外、他の職業の女性は見ようによっては過激な衣装なのである。カイは真っ赤になって資料を叩き返した。
「馬鹿――――ッ!!!真剣な顔して、そんなくだらない事!!!」
「野郎の浪漫だろうが!今からでも遅くねェ!!坊や、戻るぞ!!!」
「まだ言うかッ!!!!」
「……ヘヴィだぜ」
三度目の会心の雷。肩を怒らせて歩いて行く盗賊の後には、焦げた勇者が倒れていたとか、いないとか。

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拍手絵更新しました by神原

拍手イラストに投票頂きまして、有難うございました~!!
第1位 ソルカイ    84%
第2位 親子ソルカイ  12%
第3位 騎士ソル    3%
第4位 ブリジット   1%
第5位 紗夢      0%
という結果になり、拍手絵は「ソルカイ」に決定となりました!!

そういうワケで、早速制作し、先程拍手絵が新たに追加されております。
……ホントはアクセルとソルカイ2枚のみだったんですけども、
相方の希望で「騎士ソル」も追加されております。
その代わり?に相方のSSは削除されておりますので、ご了承下さいませ。

あと、アンケートも撤去しております。
また何かお尋ねしたい時には宜しくお願いします~。

……どんな絵柄かは、是非拍手してご覧下さいませv

砂漠~イシス Lv.15

砂。ずっと砂。どこまでも砂。
登っては下り、下っては登る。
照り付ける太陽。ギラギラと空で存在感をアピールしている。
「クソッタレ」
「我慢しろ。ここを抜けたらオアシスがあるから…」
「坊やは身かわしの服だからいいかも知れねェが、俺は鉄の鎧着けてんだぞ。天然の鉄板焼きじゃねェか」
軽装備のカイはそれほど辛くはないが、重装備のソルは暑さにやられている。だからと言って、装備を取る訳にはいかない。魔物が沢山うろついているのだ。
「大丈夫だ、きっと不味くて誰も食べないから」
「…テメェ」
「怒るともっと暑いぞ。お前は元々が暑苦しいんだから、諦めろ」
カイのセリフが刺々しい。どうやら昨夜の処理と銘打っての慣らしが、余程頭にきているらしい。だが、ソルは失敗したとは思わなかった。カイとて満更ではないのだ。真面目ゆえの反発だろう。やれやれと肩を竦めると、ソルはアッサラームの街で新調した鉄の斧を担ぎ直した。モンスターの群れが現れたのである。
「クソ暑ぃのに、やたらと敵が多いな」
「うん、なるべく急いで砂漠を抜けよう」
ここでの厄介な敵は地獄のハサミ。カニ型モンスターで防御力が高い上、更に防御力を上げる呪文を使うのだ。一度でもその呪文を使われたら、カイの攻撃力ではダメージを与えられない。
「くっ……ソルッ!」
「下がってろ!」
全ての攻撃を弾かれたカイを下がらせると、ソルが地を蹴った。鉄の斧は重さを利用して敵を叩き斬る武器なだけあり、会心の一撃が出易いのだ。斧特有の風を斬る音と共に、地獄のハサミを一刀両断した。一瞬、見惚れて動きを止めてしまったカイは、すぐさま我に返ると、武器での攻撃を諦め、ノアニールで購入しておいた魔道士の杖を取り出した。装備は出来ないが、道具として使えば呪文を使えないカイでも火の玉を操れるようになるのだ。戦力となるものは一つでも多く持っておきたい。
「確実には効かないけれど、全くダメージを与えられない武器よりかはマシだ」
「準備がいいじゃねェか。重ね掛けされる前に潰すぞ」
「はい」
ソルと言えども、防御力を高める呪文を重ねて掛けられると、武器での攻撃を弾かれてしまう。そうなると、後は呪文攻撃しか残っていない。グループ攻撃出来る呪文は覚えているが、新しい場所へ向かう時は不測の事態を考え、なるだけ魔法力は温存したいのだ。ソルの攻撃対象は一撃で葬れる敵だ。それ以外の敵をカイが削ればいいのである。
「やれやれだぜ」
「いい勝負でした」
ソルが戦闘で口を出した時は、速攻で勝負が付く。カイはそんな男をやはり尊敬していた。言葉に出せば何をされるか分からない為、黙ってはいるが。いや、黙っていても男には見抜かれているだろう。
そうして敵を倒しつつ先を急いでいると、山の裾にポツンと祠が立っていた。完全に無視して素通りしようとした勇者を引っ張り、カイは祠へ向かった。そこには一人の老人がいた。
「魔法の鍵をお探しか?」
『はい』or『いいえ』
急いでいるのだ。『はい』を選ぶ。
「鍵は砂漠の北、ピラミッドに眠ると聞く。しかしその前にまずっ!イシスの城を訪ねなされ。確かオアシスの近くにあるはずじゃ」
話し掛けると鍵の情報をくれた。カイはタンスや本棚を調べて祠を出ると、進路を西へ向けて歩き出した。
「坊や、鍵の情報を手に入れるより、道具を漁りに行ったのか?」
「失礼な、そんな事ないよ。道具はついで」
「クックック、頼もしいヤツだぜ」
「……今のは誉め言葉とは思えないけど…有り難う」
財布と道具袋の管理をしているカイは、手に入れられるものは全て手に入れたいのだ。ソルもそれを察しているからこそ、面倒でも彼の行動に付き合っているのである。
「さ、オアシスが見えてきたぞ。後もうひと頑張りだ」
まだ遠くに見える緑を指差し、カイがにこやかに笑った。暑さにウンザリとしながら、ソルは黙々と歩き出した。


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アッサラームで寄り道中 ~要注意警報発令!~

劇場から離れると、それまでの賑わいが一変して街は静まり返っていた。宿屋の扉を潜ると、主人がマスターキーを持って部屋へと案内してくれた。
「ではごゆっくりとお休み下さい」
部屋の鍵を開けると、主人は頭を下げてカウンターへと戻って行った。ソルは後ろ手に扉を閉めて中に入ると、設置されている冷蔵庫からビールを取り出して喉に流し込み、寛ぐ体勢に入った。空いているベッドに腰を下し、窓を少しだけ開けて煙草に火を点けた。そうして煙草を燻らせながら上着を放り投げ、眠る準備に取り掛かる。そこで、ソルは小さく嘆息した。
「狸寝入りか?」
独白のようなそれは、カイの耳に届いた。起きて待っていたと言うよりも、眠れなかったようだ。
「こんな夜中に何殺気立ってやがる」
「何でもない」
棘のある言葉に、ソルは小さく舌打ちした。カイはシーツを被って丸まったまま、顔を上げようともしなかった。『淋しい思いをして待っている』とは踊り子の言葉だが、とてもそんな風には見えない。ソルはカイのベッドへ音も無く近付き、シーツを捲り上げた。気配を感じさせない男に、ようやくカイが驚いて顔を上げた。
「ッたく、ガキが…。妬いてんなら、素直にそう言いやがれ」
「なっ…!妬いてなんてない!」
「うるせェ、こんな夜中にムキになるな」
「……っ!…シーツ返せ、もう寝るから」
図星だったのだろう。カイが不貞腐れ、シーツを引っ張った。ソルは煙草を焼き尽くすと、カイに圧し掛かり、可愛げのない言葉を吐く唇を塞いだ。
「……んぅっ!!」
驚き、そして慄くカイを押さえ付け、ソルは巧みに彼の着衣を乱していった。道具袋は手の届かない場所にあり、以前のようにキメラの翼を使う事はかなわない。暴れるカイの両手を片手で押さえ付けると、ソルは彼の逃げ道を完全に塞いだ。
「触るな。外で満足してきたんだろう」
「満足してねェから触ってんだ」
「性欲処理なら一人でヤれ」
気の強い眼差しを向けてくるカイに、愛撫の手を止めないままソルは喉の奥で笑った。
「ヤらせる気がないなら、俺のする事にいちいち腹立てんじゃねェよ」
「…っ、そんなんじゃない。私は…」
「ガキが…、お前だって溜まってんだろうが」
「ぅわっ!馬鹿!やめろっ!!」
カイが驚きの声を上げた。それでもソルはお構い無しに、暴れ出したカイを押さえ付けて、手を止める事はしなかった。
「クックック、ただの『性欲処理』だろ?挿れやしねェよ、暴れんな」
カイの言葉を使ってソルが笑うと、カァッと真っ赤になってカイが柳眉を吊り上げた。
「この馬鹿!!地獄へ落ちろ!!!」
「あぁそうだな。俺が地獄へ落ちる代わりに、坊やを天国に連れて行ってやるよ」
「……あっ!」
カイの甘い声に、ソルは目を細めて笑った。すると、カイが悔しそうに唇を噛んだ。ソルは優しく口づけを落とすと、カイを高みへと導いていったのだった。

翌朝、チェックアウトしにカウンターへ降りた二人に、宿屋の主人が笑って言った。
「おはようございます。夕べはお楽しみでしたね。では行ってらっしゃいませ」
「な、な…っ」
清々しい笑顔を向けられ、カイが真っ赤になって固まってしまった。
「あぁ、大丈夫です。他のお客様は良くおやすみでしたから、誰も気付いておりませんよ」
主人の言葉にカイがすらっと封雷剣をどこからか取り出し、それを見ていたソルが楽しそうに笑った。
「クックック、一般人に得物向けんじゃねェよ」
「照れる事無いじゃないですか。普通ですよ」
平然と言い切る主人の言葉に、カイの中の何かが切れた。
「ライジング…」
その構えに気付くと、ソルは口の中で『ヤベェ』と零し、主人を担ぎ上げて避難した。カウンターが木っ端微塵に吹き飛んでも、主人は顔色一つ変えずに、
「シャイな恋人ですね」
止めの一撃を吐いた。カイが自ら封印した技を解放しようとしている。
「あんなに照れて……あなたも大変でしょう」
「あぁ、全くだ。ま、次からは『処理』に困らなくなるし、構わねェがな」
「ツヴァイ……」
店主を足元に下ろすと、ソルもどこからか封炎剣を取り出して構えた。
「クックック、死にたくなかったらそこを動くなよ」
「はい」
荒れ狂う雷と吹き荒れる焔がぶつかり合い、お互いの攻撃を食らいあった。そして、閃光とともに蒼と紅が消え去った。
「……ッ!」
カイが驚愕に目を瞠った。ソルが後から出した焔に、雷が相殺されてしまったのだ。
「それだけ動揺しまくって出した技だぜ。打ち消せて当然だ」
余裕の態でソルがニヤリと笑った。だが、説明を受けてもカイは驚きを隠せなった。確かに、常より威力は劣っていたかも知れない。しかし、大型ギアを一撃で葬る事の出来る技である。それを後から出した焔の威力に負けたのだ。どれだけ力の差があるのか。カイがシュンと肩を落としてしまった。
「ッたく、危ねェな。これ以上アイツをからかうなよ」
「はい、失礼しました」
肩越しに主人を見やり、ソルは苦笑した。
――危うく制御が利かなくなるとこだ。――
ヘッドギアを押さえ、ソルは溢れる力を押さえ込んでいた。
そんなやり取りをした後、勇者一行は魔法の鍵を求めて、砂漠へ向かって歩き出したのだった。


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アッサラーム Lv.14

太陽が傾き大地がオレンジに染まり出すと、ソルは路銀稼ぎを切り上げてアッサラームの町へ進路を戻した。重い足取りでその後を歩くカイの表情は険しくなる一方だった。
町に着く頃には日が完全に落ちていた。夜にしか開かない武器防具屋で装備を整えると、カイは荷物を持って宿を探した。表情を曇らせる彼に、ソルは肩を竦めて言った。
「文句があるなら坊やも行きゃいいだろ」
「行きません」
棘のある言葉に、ソルは口を曲げた。抱かれる事を拒み、他に手を出す事にもいい顔をしない。どうしろと言うのか。
「ッたく、独占……分かった、分かった。武器を下ろせ」
独占欲の強い坊や。どうやらその言葉を言われたくないようだ。カイが懐からナイフを取り出し、ソルへ突きつけたのである。
「坊やは先に休んでろ。じゃあな」
アッサリと降参すると、ソルは踵を返して夜の街を歩いて行った。見えなくなるまでその背中を見送り、カイは大きな溜め息を吐いた。そして、ふと周りからの視線に気がついた。手にナイフを持ったままだった事に気付くと、慌てて懐にしまい、宿へと向かう。荷物を下ろしてベッドに腰掛け、カイは窓の外に視線を投げた。
「ソルを責めるのは…お門違いなのに…」
カイとて分かっている。だが、それでも無性に腹が立つのだ。それがソルと言う男だからと認める事も、許す事も出来ない為である。苛立ちを必死に抑え、カイはベッドに横になって目を閉じた。

一方、ソルは町の名物のベリーダンスが見られる劇場で、一人酒を飲んでいた。だが、ダンスには目もくれずに、ずっと酒に走っている。マスターも手馴れたもので、ソルが空いたグラスを置くと、間を空けずに次のグラスを置いていく。そんな男に気付いた踊り子がそっと近付いて来た。
「あ~ら、素敵なお兄さん!ねぇ、ぱふぱふしましょっ。いいでしょ?」
『はい』or『いいえ』
「こんな誘い方が流行してんのか?…まぁいい」
「あら、うれしい!じゃあ、あたしに付いて来て!」
ソルは金をカウンターに置いて席を立った。劇場前の建物の玄関で待っている踊り子を追うと、
「さあ、こっちよ」
手招きしながら階段を上がって行った。後に付いて階段を上がると、ベッドが一つ置いてある部屋に出た。
「ねぇ、ベッドに座っててね。明かりを消して暗くしてもいい?」
『はい』or『いいえ』
どちらでも構わないが、『はい』を選んでみる。
「消すわよ……」
カチッと言う音と同時に、真っ暗になった。夜目が利くソルだが、それよりも気配を読んだ方が早い。背後に人の気配がした。
「ぱふぱふ、ぱふぱふ…」
「…」
とりあえず、ソルは無言で相手の出方を待ってみた。
「どうだ、坊主。わしのぱふぱふはいいだろう」
部屋に明かりが点き、視線を投げると体格のいい男が背後にいた。踊り子がニッコリと笑いながら言った。
「あたしのお父さんよ。ぱふぱふがとっても上手なの。どう?肩凝りが治ったでしょう。また来てねっ」
「わっはっは。じゃあ、わしはこれで……」
立ち去ろうとした男の腕を掴み、ソルが凄絶な笑みを浮かべた。
「はいそうですかと、そのまま逃がすと思ってんのか?」
「ぎゃあああああ、娘の前で犯される!!」
「気色悪ぃ事ぬかすな!!誰がテメェみてェなむさ苦しい野郎を…っ!!!」
「わ、わしの娘に変な気を起こすなよ!!」
「誰が起こすかッ!!!!」
ソルは男に頭突きを食らわした。一撃で撃沈。そんな様子を見ていた踊り子が感心したように言った。
「何だか最初から気付いていたようね、お兄さん」
「前払いじゃない女は警戒されるぜ。それに、交渉もしない内に男を部屋に上げる女なんぞいねェ。マッサージの客寄せならもっと上手くやるんだな」
「あら、わざわざその忠告をする為について来たの?見かけによらず優しいのね。それとも、本当にあたしを買うつもりだった?」
肩に触れようとした踊り子の手を払い、ソルはやれやれと嘆息した。
「買わないと確信したから声を掛けて来たんだろ」
踊り子が目を瞠った。劇場でベリーダンスに釘付けになっていた男達の中で、唯一ソルだけがそれに見向きもせずに酒を呷っていた。そんな男だからこそ踊り子は声を掛けてきたのだ。
「うふふ。お手上げね、それも気付いていたの」
「フンッ、だからもっと上手くやれと言ってんだ。じゃあな」
ヒラヒラと手を振って出て行く男の背中を名残惜しそうに見送り、踊り子は楽しそうに笑った。
「残念ね。いいと思った男だったのに、他に気を取られてるんじゃ、仕方ないわね」
武器防具屋から出てきた二人のやり取りを、客を探して歩いていた時に見かけたのである。踊り子はハッとある事を思い出すと、二階の窓から身を乗り出し、家から出て行く男に声を掛けた。
「お兄さん、きっとあの子淋しい思いをして待ってるわよ!こんな所で油を売ってないで、早く帰って抱いてあげたら?」
「……んなとこからデケェ声出してんじゃねェ…」
「やっぱり否定しなかったわね」
笑みを浮かべた踊り子に、ソルは鋭く舌打ちしすると、踵を返して歩き出そうとした。その背中に踊り子が再び声を掛けてきた。
「ああ、待って!忠告をくれたお礼に、一つだけ助言してあげる。あの子もあなたと同じ男でしょ?頭と手は使いようよ、お兄さん」
「簡単に言ってくれるぜ…」
「それだけ大切にしてる証拠ね、羨ましいわ。あたしだったらいつでもいいわよ。また来てね!」
「…」
またでかい声でとソルは呆れ返り、カイが待つ宿屋へと足を向けたのだった。

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隠里、ノアニール Lv.14~アッサラーム Lv.14

まずは夢見るルビーをエルフの女王に返さなくてはならない。ソルは急いでエルフの隠里へ向かった。
「なんという事じゃ!息子が死んでいたなど……。わしの妻が目を覚ましてこの話を聞いたらどれほど悲しむ事か…。ああ、嘘だと言って下され!」
ノアニールの村長が嘆き哀しんでしまった。いつも通り素通りすれば良かったか。ソルは話しかけた事を悔やみ、女王の下へ進んだ。
「その手に持っているのは夢見るルビーでは……?なんと!アンと男は地底の湖に身を投げたというのですか!?おお!私が二人を許さなかったばっかりに……。……………。分かりました。さあ、この目覚めの粉を持って村にお戻りなさい。そして呪いを解きなさい。アンもきっとそれを願っている事でしょう……。おお、アン!ママを許しておくれ……」
ま、自業自得だ。言葉には出さなかったが、ソルは冷ややかに女王を見ていた。
「あなた方にはお礼を言わねばなりませんね。けれど……私は人間を好きになった訳ではありません。さあ、おゆきなさい」
同感だ。貰う物を貰えば、もうここには用はない。ソルはサッサと踵を返して歩き出した。
「素通りしてもいいくらいだが、一応村人を起こしてやるか…。装備だけ整えてサッサと先を急ぐぞ」
最短でアッサラームへ行きたいようだ。その目的を知るカイのやる気が徐々に失せていく。そんな事とは露知らず、知っていても動じないであろうが、ノアニールにやって来ると、早速ソルは目覚めの粉を掌に乗せた。目覚めの粉は風に舞い上がって村を覆ってゆく!なんと!人々は目覚め始めた!
「ふわあ…。ノアニールの村にようこそ」
カイがどれほど揺さ振っても、呼び掛けても起きなかった村人が目を覚ました。ソルは村に活気が戻った事を確認し、道具屋で装備を揃えると、村を出て東の地へと進路を進めたのだった。
「先を急ぐのはいい事だと思うよ。でも、お前の考えは間違っていると思う」
ロマリアの東の橋を渡った所で、とうとうカイが不満を口に出した。そんな彼を横目に見やり、ソルは口の端を上げて笑った。
「何だ、ヤらせる気になったのか?」
「……お前と言うヤツは…。そういう考えから離れろと言っているんだ」
手厳しい盗賊に、勇者は肩を竦めた。
「坊やの方が野郎として間違ってると思うがな…。処理してんのか?」
「……うるさい」
「恥ずかしがる事ねェだろ。野郎として当然だ」
「…人間としては間違っていると思うぞ」
男の考えが変わらない事を察すると、カイは口を閉ざした。
そうして、夜でも賑やかな眠らない町、アッサラームへとやって来た。だが、まだ日が高い。まずは街の見物だ。商品の値段が付いていない怪しげな店は無視し、その他の武器防具屋や、道具屋を回る。
「強い武器が売っていないな。これから砂漠に入るのに、今までの武器じゃちょっと不安だぞ。……やっぱりちょっと怪しかったけれど、さっきの店で買った方がいいのかな…」
「開いてなかった店が一つあっただろ。夜にもう一度行くぞ。まともな武器の一つでも置いてるはずだ」
「うん」
「夜まで時間潰すか。日が高いとつまらねェ町だ」
失礼な事を平然と言う勇者である。カイは一瞬表情を曇らせたが、頭を振って気持ちを切り替えてソルの後を追い、日が落ちるまで町の外で路銀稼ぎに精を出したのだった。


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ノアニール西の洞窟 Lv.14~東の地へ

冷たい水に突然入ると心臓麻痺を起こす可能性があるのだが、ソルは迷わずカイを地底湖へ蹴り飛ばしたのである。カイは慌てて湖面へ顔を出し、激しく咳き込んだ。
「な、何で……?」
状況を把握出来ずに、カイが周りを見回した。些か乱暴なやり方ではあるが、無事に暗示が解けて正気に戻ったようだ。ソルは落ちている夢見るルビーに結界を張ると、道具袋に突っ込んだ。そして、チェーンクロスを振るってカイの腕に巻きつけると、鎖を引っ張って彼を引き寄せた。器用な男である。
「何も覚えてねェのか?」
カイを引っ張り上げ、ソルが尋ねた。カイは頭を左右に振り、
「ルビーを見ていたら、何だか意識が遠くなって……気が付いたら湖の中だった」
記憶がゴッソリと抜けている事に蒼褪めながら、濡れて冷たくなった服に体温を奪われ、カイは身体を震わせた。
「ッたく、テメェは……どれだけ手間掛けさせりゃ気が済むんだ」
「……すみません…」
タオルと毛布を掛けてもらい、カイは申し訳なくて頭を上げられなかった。盗賊としての警戒心を怠って不用意に他種族の宝に触れ、その影響を受けてしまったのだ。反論の余地は無い。
「お前がヘマする度にペナルティ付けるぞ」
「…ペナルティ?…何の??」
「礼の回数」
「………礼…??」
遠回しな言い方では彼には伝わらない。が、ソルが性質の良くない笑みを浮かべると、カイは即座に身の危険を感じた。つまり、失敗した回数分、身体で返せという意味だと理解すると、カイは肩を震わせて笑った。
「ふ、ふふふ、ふっふっふっふ……」
「クックックックックック……」
両者ともに手に武器を握り、笑いながら構えを取った。口は笑っているが、目は笑っていない。
「もっと他に言う言葉は無いのか!!人間として最低だぞ!!」
「人間の基準なんぞ、知った事か!野郎としての俺の偉大さを知れ!!」
「自分で偉大とか言うな!変態!!」
「お預け食らって溜まってんだ!!当然だろうが!!!」
真剣そのものに闘っている二人の、何と低レベルなやり取りか。いや、彼等にとっては重大な問題なのだろう。
「いい加減にヤらせろ!!」
「馬鹿――――――ッ!!ヤりたかったら、一人でヤれ!!!」
カイの会心の一撃。ソルは大ダメージを受けた。精神的に。
「テメェ、一番の禁句を……。喉から手が出るほど欲しいティーカップを前にして、買うなと言われてるようなもんだぞ!!」
「そ、それとこれとは別問題!人間としての在り方の問題だろう!!」
ああ言えばこういう。半眼になって口を曲げていたソルだが、ふとある事を思い出した。ここはノアニール西の洞窟。ここでの問題は解決し、ロマリアより北は全て制覇した。次の目的地はロマリアより東。西へ行く為の魔法の鍵を手に入れに行くのだ。
「……東、か」
呟いたソルがニヤリと笑った。散漫だったソルが集中した事に気付くと、カイは身体が緊張するのを自覚した。だが、ソルは武器をしまうと、道具袋を担ぎ上げた。
「行くぞ。ルビーを返して東に向かう」
「それはいいけど……次は何を企んでいるんだ?」
「別の喰いもんを探しに行くだけだ」
「………はぁ?」
意味が分からない。カイは残っている武器や毛布を拾いながら、首を傾げた。東の地には砂漠への入り口、アッサラームの町があったはずだ。名物はベリーダンス。これが目当てか。
「……駄目勇者……」
強い力を持っていながら、それを使う方向が間違っているのだ。カイは痛む頭を押さえた。ソルはそんな彼を引き寄せて腕の中に納めた。
「な、何……って、うわっ」
突然の男の行動に頬を染めたカイだが、下から熱風が吹き上げ咄嗟に男に縋り付いた。濡れた髪や服が乾き、冷えた身体も温まった。
「風邪でも引かれちゃこっちが困る」
「……あ、有り難う」
「あぁ、礼は……」
「二度も同じ手を食うと思ったら……って、手を放せ!!」
既に男の腕の中にいたカイに逃げ場所など無かった。再び、ある程度堪能した後、ソルはそっとカイを逃がして地底湖に背を向けて歩き出した。そんな男の逞しい背中を顔を真っ赤にしながら追い、カイはそっと後ろを振り返った。
「明日死ぬかも知れない。だから、今を精一杯生きなくちゃ。生きて、生きて、生きて。最後に、生きていて良かったと、笑いたいから…」
エルフの姫と村の若者へ祈りを捧げると、カイは零れ落ちた一滴を拭い、踵を返した。


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