気紛れ日記

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管理人:竜胆 彩葉(りんどう さいは)


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エルフの隠里 Lv.14~ノアニール西の洞窟 Lv.14

エルフの隠里を後にした勇者一行は、里からほどない場所に口を開ける洞窟へとやって来た。
「敵が強いなぁ…。本当はもう少しレベルを上げて行きたいけれど…」
「焦ってんのか、坊や」
「だって…あんな状態を放ってはおけないよ」
「お人好しも大概にしとけよ。どうにもならない事だってあるんだぜ」
どちらが勇者か分からない。カイはムッと柳眉を逆立てて、先を急いだ。そうして暫く進んだ先の泉の傍に、一人の神父がいた。
「この洞窟のどこかに、体力や気力を回復してくれる聖なる泉があるらしい。しかし、どうしてこんな所にそんな泉が湧いたのか……。わたしには悲しげな呼び声が聞こえますぞ」
ソルはサッサと踵を返して地下への階段を探した。カイは表情を引き締め、同じく階段を探した。地下二階の回復の泉でレベルアップを図り、ある程度余裕が出来るまで成長してから、最深部を目指して進んだ。地下四階まで降りてくると、
「うわぁ…凄い…」
カイが感嘆の声を上げた。最深部は広い空洞になっており、その先は地底湖になっていた。ソルは橋を渡って島へ向かった。
「二人の姿が見当たらないな…」
不安そうに辺りを見回すカイの目に、宝箱が入った。カイは宝箱を開けた。カイは夢見るルビーを手に入れた。更に宝箱には書置きが残されていた。カイは書置きを読んだ。
『お母様。先立つ不幸をお許し下さい。私達はエルフと人間。この世で許されぬ愛なら…せめて天国で一緒になります……。アン』
カイは絶句した。そんな彼の手から書置きを取って目を通すと、ソルはフンと鼻を鳴らし、書置きを焼き尽くした。
「ま、予測範囲内だな。エルフの掟が厳しいのは有名だ」
ショックを隠し切れないカイの頭をポンポンと慰めるように軽く叩き、ソルはそっと傍を離れて懐の煙草に手を伸ばした。横目でルビーに目を落とす彼を見ながら煙草に火を点ける。
「…?」
ソルは違和感を覚えた。カイが一向に視線を上げない。まるでルビーに魂を奪われたように。
「おい」
呼び掛けると、ようやくカイがノロノロと動き出した。だが、―――
「ソル、一緒に死のう」
凄まじい殺気を放ちながら、カイがゾッとするほどの美しい笑みを見せた。その手にチェーンクロスを握り、ソルとの距離を縮めてくる。
「なるほど…だから『夢見るルビー』って訳か……」
ソルは鋭く舌打ちした。エルフの宝であるこのルビーは人間には強い影響力を持っているのだろう。カイが暫くの間見つめていただけで、強い暗示に掛かってしまうほどだ。それは、呪いと言っても過言ではないだろう。天国で幸せを感じる、甘美で残酷な夢だ。
「魔王を倒したって、人が変わらなければ平和なんて来ない。ソルにばかり犠牲を強いる人を救ったって…世界は平和になんてならないよ」
「だから、平和な天国に行こうってか?」
ソルの言葉にカイが笑みを深めた。急いでカイを正気に戻さなければ、どんどん夢の深みに嵌っていく。エルフの姫と村の若者が見た夢を、正に今カイも見ているのだ。ソルの表情から一切の感情が消えた。槍を握り直すと、腕を下ろした状態で待ち構える。隙だらけに見えて、一切の隙が無い。これが男の戦闘体勢である。
「愛しているよ、ソル」
「あぁ、俺もだ」
幸せそうな笑みを浮かべて、カイが動いた。チェーンクロスを振るい、ソル目掛けて打ち付けた。それを最小限の動きでかわすと、ソルは槍を回転させて横に薙ぎ払う。カイは体勢を低くして柄を掻い潜ると、地を蹴って男に迫った。そして、チェーンクロスを手放して懐からナイフを取り出し、ソルの胸に突き立てる。槍から手を放したソルの両腕を抜けて、白刃がその胸に吸い込まれた。
「ッたく、目ェ覚ませ」
突き出されたその腕に自分の腕を回すと、ソルは腕を引いて上体を沈み込ませた。カイの攻撃をそのまままっすぐ受け流したのである。ソルの脇の下にあったナイフが地面に突き刺さった。
「頭冷やして来い」
呟き、突き出した勢いのまま浮かび上がるカイの身体に脚を添え、その瞬間に危険を感じてナイフから手を放した彼の腕を放して蹴り飛ばした。カイがそのままナイフを掴んでいたら、腕が折れていただろう。カイはその流れに逆らわずに投げられ、派手な音を立てて地底湖へ落ちたのだった。


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ノアニール Lv.14

ノアニールにやって来たはいいが、村人が寝こけている。カイは男性に話し掛けたり、揺さ振ったりしてみたが、一向に目覚める気配が無い。ソルは辺りを見回し、やれやれと肩を竦めている。既に原因に気付いているようだ。カイもある考えに思い至り、表情を曇らせた。
「……あんまり考えたくないけれど……」
「呪いだな」
「ハッキリと言うな」
「ま、俺達には関係無ェ。無視して進むぞ」
薄情な勇者である。カイは即座にソルの髪を引っ張った。
「ぅお?」
「薄情者!起きている人を探すぞ!」
厄介事には変わりないが、見てしまったものを無視する事は出来ない。カイはソルの後ろ髪を引っ張り、村を歩き回った。
「ッたく、いい加減髪から手を放せ、坊や」
「放したら、村人を探すのを手伝うか?」
「探して欲しけりゃヤらせろ」
「この最低勇者!!」
盗賊が放つ雷を避けながら、ソルはふと村外れにある家を視界に納めた。カイからは死角になっている事に気付くと、ソルはそれとなく立ち位置を入れ替えた。すると、カイも即座に家に気が付いた。
「あれ?ソル、あんな所に家がある。行ってみよう」
「…やれやれだぜ」
髪を引っ張るカイに、ソルは小さく苦笑を零した。

家には学者がいた。
「おお!どなたか知りませぬが、どうかエルフ達に夢見るルビーを返してやって下され!夢見るルビーを探してエルフに返さなければ、この村に掛けられた呪いが解けませぬのじゃ。エルフの隠里は西の洞窟の傍。森の奥にあるそうじゃ」
説明不十分のような気がしないでもないが、とにかくこの村の人々がエルフの呪いによって、眠らされている事は分かった。早速隠里へ向かうと、入り口で老人を発見した。
「ノアニールの村の皆が眠らされたのは、わしの息子のせいじゃ。あいつがエルフのお姫様と駆け落ちなんかしたから…。だから息子に代わってこうして謝りに来ておるのに、話さえ聞いてもらえぬ。あぁ、わしはどうすればええんじゃ!」
どうやらノアニールの村長のようだ。なるほど。大体の話は理解出来た。次に二人はエルフの女王の元へ説得に向かった。
「あなた方人間がこのエルフの里にいったい何の用です?何ですって?ノアニールの村の…。そう、そんな事もありましたね。その昔、私の娘アンは一人の人間の男を愛してしまったのです。そして、エルフの宝夢見るルビーを持って男の所へ行ったまま帰りません。所詮、エルフと人間。アンは騙されたのに決まっています。多分、夢見るルビーもその男に奪われ、この里へも帰れずに、辛い思いをしたのでしょう。あぁ、人間など見たくもありません。立ち去りなさい」
村長の言う通り、話を聴く耳を持っていない。用は済んだとばかりに、ソルはサッサと里の出口に向かって歩き出しており、カイは口を引き結んでその後を追った。
「ノアニールの村長も、エルフの女王も、自分の事しか考えていない。……この一件はそれが原因で起こっている事なのに…」
「放っておけ、首を突っ込むだけ無駄だ。坊やも出来る事と出来ねェ事がある事くらい分かるだろ。お人好しも大概にしておけ」
唇を噛むカイの頭を慰めるようにポンポンと叩き、ソルは懐に手を伸ばした。その手から煙草を取り上げ、カイはソルを見上げた。
「あの二人は放っておいてもいいとして……駆け落ちしたエルフの姫と村の若者を捜し出そう。このままじゃいけない」
「煙草返せ」
「ソル!」
「ここに来る途中、洞窟があっただろ。身を隠すとしたら、そこだ」
思いも掛けない男の言葉に、カイは驚愕に目を見開いた。やる気の欠片も見せないくせに、カイの行動パターンを予測し、次の目的地までシッカリと押さえている。カイは煙草をソルに返し、嬉しそうに笑った。
「有り難う」
「あぁ、礼は…」
言葉を切り、ソルは身の危険を感じて逃げようとしたカイを捕まえ、深く口づけた。ジタバタと暴れるカイをある程度堪能した後、そっと逃がした。
「この、馬鹿ッ!!」
「ククク、これで我慢してやってるだろ」
「貴様と言うヤツは……ッ!!」
見直したと思った矢先のこの行動にカイは怒りに震え、雷を放ちながら煙草を燻らせ先を行くソルを追い駆けたのだった。


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二人旅的バトン回答

攻略レベルなど既に目安にもならない。余裕で倒せるまで強くなった頃が、攻略レベルなのである。
「ここら辺は厄介な敵が多いな。薬草は多めに持って行こう」
手持ちと道具袋の薬草を確認しながら、カイがソルを振り返った。
「あぁ、任せるにゃん」
「………………はぁ?」
ソルが不思議なセリフを吐いたように聞こえ、思わずカイは素っ頓狂な声を上げてしまった。
「にゃんだ、その顔は?我輩の顔ににゃにか付いてんのかにゃ?」
「………………」
どうやら聞き間違いではないようだ。
ソルの顔を思い浮かべ、ソルの行動を思い浮かべ、ソルの声を思い出して、反芻してみよう。沢山反芻してみよう。
「ぶッ………あっはっはっはっはっはっは!何だそれ!?新しい遊びか??」
カイが腹を抱えて笑った。目尻に涙さえ溜め、大笑いしている。ソルは酷く傷ついたようだ。勇者は傷付いている。盗賊は笑っている。勇者は立ち直り、説明を開始した。

☆猫バトン☆

・これが回って来たら、次に書く日記の語尾全てに「にゃ」「にゃん」「にゃー」などを付けなくてはならない。
・「な・ぬ」も「にゃ・にゅ」にすること。
・一人称は必ず「我輩」にすること。
・日記の内容は普段書くような差し障りのないもので構わない。
・日記の最後にバトンを回す五匹の名前を記入するのを忘れないこと。
・既にやったことのある人でも、回されたら何度でもやること。


「内容全ての語尾に付くはずの『にゃ』だが、どういう訳か我輩だけ被害に遭ってるみてェだにゃ」
「ソル、少しくらい可愛い顔をしてくれ。夢に出てきたら、笑い死にしそうだ」
「……テメェ…。ま、覚悟しとくにゃん。次は坊やの番だからにゃ」
「………………え?」
カイは目尻に涙を浮かべたまま、顔を上げてソルを見た。ソルはニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。
「内容説明の最後の二項をちゃんと読むにゃ。バトンを回す五匹に、坊やも指名してやるから有り難く思えにゃー」
カイは飛び上がって驚いた。
「ば、馬鹿!そんな事誰が喜ぶか!!お前がやるから面白いんじゃないか!!」
「にゃにも聞こえんにゃー。次は坊やにゃー」
そうしてギャンギャンと喚く二人の前に魔物の群れが現れた。即座に臨戦態勢に入る。さすがは歴戦の勇者達である。
「迅雷のゆえんをお教えしよう」
「うざってェにゃー」
「喋るな!気が抜ける!!」
「ヒデェ言われようだにゃ、おい」
先に地を蹴ったのはカイだった。チェーンクロスを振るい、敵グループに攻撃した。だが、まだまだ攻略レベルに追いついていない上、彼の攻撃力では倒せない。
「くっ、ソル!」
「ッたく、しゃあねェにゃー」
ソルが鉄の槍を振るう姿はカッコイイ。だが、敵に攻撃を加える度に、『吹き飛ぶにゃ』や『ゴタクはいらにゃー』と男前なセリフを吐いてくれるものだから、
「あははははははははっ!駄目だ、力が抜けて闘えない!!」
とうとうカイが戦闘不能に陥った。
「笑うんじゃにゃー!さっさと闘うにゃー!!」
「あっはっはっはっはっはっはっ!!誰か…た、助けてっ!!!!」
「…………にゃー」
盛大に笑われ、ソルは泣きたくなってきた。
「エグゼビースト!」
突然地面から使役獣が現れ、彼等を取り囲む敵を一気に飲み込んだ。
魔物の群れをやっつけた。
「にゃにしに来たにゃ?」
同じく地面から現れた母親に、ソルは嫌そうに顔を顰めた。
「ふふ、どうした?変声期か?」
「んにゃ訳あるか」
「は、母上殿…」
現れた母親に、カイはどうにか笑いを引っ込めた。なるべくソルの方を見ないようにしている姿が笑みを誘う。
「まったく…貴様は仲間一人も守れんのか?」
「うるせェにゃ。我輩の所為じゃにゃー……と思うにゃん…」
「このパーティの要は貴様だろう。全て貴様の責任だ」
「…………にゃー」
ソルが舌打ちし、口を閉ざした。そんな男を背にカイが前に出た。
「違うのです、母上殿。ソルは悪くありません。私がもっと気を引き締めていれば、こんな事には…」
「庇わなくとも良いのだぞ。変声期にしては可笑しな症状だが、全てこいつが悪い」
「いえ、多分、きっと、そういう症状ではないのですが……。な、何にしても、もう大丈夫です。心配をお掛けして、申し訳ございませんでした」
「ふふ、そうか。また何か困った事があれば、いつでも呼ぶがいい」
そうして母親は地面へ消えて行った。どこでも●アいらずの母である。そして、頼もしい勇者の母である。
「ソル、もう大丈夫だから次の村へ急ごう」
「ッたく、やれやれだにゃー」
「ぶッ………あはははははッ!やっぱり無理!!」
「………もういいにゃん。好きなだけ笑うにゃー」
ソルは不貞腐れ、懐の煙草に手を伸ばした。不機嫌そうに黙って煙草を吹かす男の横顔に、カイの笑いが収まった。黙っていればカッコイイのだ。そうして見惚れているカイに気付いていたが、からかえばまた笑われるのは目に見えている。ソルは黙したまま視線をカイに投げ、彼が照れて視線を逸らすのを確認すると、内心でしてやったりと笑ったのだった。

番外編 終

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ロマリア Lv.??~ノアニール Lv.14

深夜にも拘らず、騒ぎに気付いた大臣がいち早く寝室に駆け込んで来た。
「王よ、何事ですか!?……カイ殿はどうされたのか…?」
一人ベッドに腰掛け、酒を片手に煙草を燻らせる男の様子に、状況を察した大臣は痛む頭を押さえた。
「権力で押さえ付けるおつもりだったのですか?馬鹿な真似を…」
「うるせェ、用がないなら出て行け」
「用件は一つだけです、王よ。言わなくとも分かっておいででしょうが、人を動かす力は心ですぞ。傷付いた人を癒すのも、心です」
「……あぁ…」
抑揚の無い声音で呟き、ソルが酒を呷った。大臣はそれ以上は何も言わず、頭を下げてその場を辞した。多くを語らずとも、男はそれを察しているのだ。

一方、寝間着のままアリアハンへと跳んで来たカイは、静まり返った街を一人歩いていた。ソルの家で休ませてもらうのは、男がいない今は気が引けた。何より、状況の説明に困る。だが、カイは着の身着のまま飛び出してきたのだ。金も無ければ、服も道具も無い。宿屋にも泊まれなかった。
「…シーツでも持って来れば良かった…」
夜風に身を震わせながら、カイは協会へ向かった。神に祈りを捧げながら、夜明けを待とうと思ったのだ。だが、―――
「カイ、こんな夜更けにどこへ行くのだ?」
黒髪のギアが声を掛けてきた。
「…母上殿…」
一人でいる彼と、靴も履いていないその姿に、美しいその表情が険しくなった。危惧していた事が起こったようだ。震える華奢な肩にそっと上着をかけてやり、母親がその軽い身体を抱き上げた。パワフルな母である。
「うわ、ちょ…歩けます!降ろして下さい!」
「裸足で外を歩くものではない。怪我をするだろう。大人しくしていろ」
「う……」
言葉に詰まり、カイは顔を真っ赤にして俯いた。そうして暖かい家に上げてもらい、カイは内心でホッと安堵の息を吐いた。
「その姿を見れば大体の想像は付くが……」
そう言いながら、母親が暖かいココアを出してくれた。ビクッと身体を震わせたカイを見て、母親が小さく嘆息した。
「最後まで…」
「いいえ!母上殿のおかげで、それだけは……っ」
「そうか、良かった」
「…っ」
優しい笑みを浮かべる母親に、カイは目元を押さえた。あの助言が無ければ、恐らく逃げ出せていなかっただろう。カイは深く感謝した。
「辛いのであれば、あの馬鹿に無理に付き合う必要は無いぞ。いや、これだけの元気があるなら、一人で行かせてもいいくらいだ」
「いくらソルでも…一人では無理です」
「そうだとして、供がお前でなくてはならない事はない。酒場に新たにメンバーを登録すれば、これ以上あの馬鹿の顔を見る必要もなくなるぞ」
「待って……待って下さい。私は…」
カイは言葉に詰まった。状況が早過ぎて、頭がついていかなかった。何故、こんな事になったのか。何故、ソルがあんな事をしたのか。カイは混乱していた。気持ちの整理が付いていないのに、行動など起こせない。そんな彼の心境を察した母は、落ち着かせようとそっと肩に手を置いた。
「すまない、焦らせるつもりは無かった。ただ、選択肢は一つではないのだと言う事を、頭に置いておくといい。さぁ、今は何も考えずに、ゆっくりと休みなさい」
「有り難うございます、母上殿…」
「明日になれば、あの馬鹿の頭も冷えていよう。どういう出方をしてくるかは分からぬが、それを待ってみるのも一つの手だ。だが…」
そこで言葉を切った母の表情が真剣なものに変わった。
「もし、冗談で流そうものなら、その時は容赦するな。同情の余地は無い。私が火山の火口に投げ入れてやろう」
何度も母親のセリフとは思えないセリフを吐く母親役である。
「お気遣い有り難うございます。私は平気ですから」
そんなギアに対しても、自分への優しさだと解釈するカイであった。「平気とは思えないのだが」とは口には出さず、やれやれと小さく肩を竦めると、母はカイを寝室へ促した。

翌朝、ソルの行動は早かった。カジノへ向かい、前の王様にサッサと王位を返上すると、挨拶の途中で踵を返した。急いでいるのである。カイがいれば、決して許さない行動だ。そうして城を飛び出すと、移動呪文でアリアハンへ跳んだ。迷わず自分の家へ向かうと、ソルは突如現れた使役獣の攻撃をかわし、焔をまとった剣をどこからか取り出した。地面から現れた母親に、ソルは敵意を向けた。そんな男を鋭く見据え、ギアも大鎌を取り出した。
「何をしに来た」
「いるんだろうが。出せよ」
「出直して来い」
「テメェ…消し炭にされてェか」
喉の奥で低く唸る男のその姿は、まるで手負いの獣である。まさかこんな朝早くに訪れるとは思っていなかった母親は、大鎌を持つ手に力を籠めた。カイが落ち着きを取り戻すまで、抑えきれるかどうか。覚悟を決めて一歩を踏み出そうとした時、玄関が開いた。
「母上殿、いきなり消えないで下さい。ビックリするじゃないですか」
カイがひょっこりと頭を出した。そちらに気を取られた、その一瞬の間にソルは動いていた。カイの腕を引いて家の中に入ると、外に母を置いたまま玄関を閉めた。
「…っ、ソルっ」
驚くカイを抱き寄せ、そっと口づけた。昨夜の貪る様なそれではなく、触れるだけの優しいキスだった。だが、その行為自体に恐怖を覚えているカイは、怯えて逃げた。そんな彼をそのまま逃がし、ソルは苦笑を零した。
「…悪ぃ」
追って来ない男に安堵し、それでも警戒を解かずに、カイは震える声を絞り出した。
「……どうして…あんな事を…」
「欲しかったからだ。気付いてなかったとは言わせねェ」
「……それは…」
カイは言葉に詰まった。男の言う通り、身の危険を感じた事は多々あった。その度にどうにかやり過ごしたり、逃がしてくれていたりしていた。そんなやり取りの最中に見せた男の真剣な眼差しを、カイは見てみぬ振りをしてきたのだ。そうして俯いて黙り込んだカイの様子に、図星だとソルは察した。
「欲しかったが…泣かせるつもりはなかった。……悪かった、カイ」
男の謝罪にカイは頭を上げた。まっすぐに見つめてくる男の眼差しに、カイはカッと頬を朱に染めて視線を逸らした。
「わ、私は…勇者の供だ!勇者が目的を達するまで…全力でサポートする旅の仲間なんだ!」
「なら、バラモスを叩きのめした後は?」
「……その時は…わ、私は…」
顔を真っ赤にして、カイは言葉を濁らせた。それが答えだ。ソルは満足そうに笑みを浮かべた。
「分かった、それまで待ってやる。行くぞ、坊や。次はノアニールだろ」
「え?ちょ、ちょっと待って。まだ何も準備が…。道具も全部ロマリアだし…」
「サッサとしやがれ」
慌てるカイを促し、ソルは目を細めて笑った。外に締め出されていた黒髪のギアは、ようやく臨戦態勢を解除し、優しい笑みを浮かべた。
勇者の目標、魔王バラモス。ヤル気がやる気に変わった時、勇者は誰よりも何よりも強い男になるのである。

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ロマリア Lv.??~寄り道中~

寝室に即席の机をこしらえ、早速二人は仕事に取り掛かっていた。大臣の言葉とは違い、さすがは王族の寝室、かなりの広さだった。
「お前の部屋がいくつ入るだろうな?」
「フンッ、無駄に広いだけだ。使い勝手は悪い」
「ふふ、そうだね」
「おら、無駄口叩いてないで、サッサと新しい書類持ってこい」
そうして次を催促するソルの作業の早さに、カイは内心で舌を巻いていた。国内の治安に関する、差し障りのない内容の書類が集められているのだが、それに判を押すもの、そうでないものを一瞥するだけで把握し、もの凄い速さで処理しているのだ。これだけの処理能力があれば、ここでの足止めの時間もさほど心配するものでも無さそうだと、カイは書類を判り易く部門毎に分けていった。
そうして、一つの山の半分を一気に片付けたところで、カイが大きく伸びをした。
「ふぅ、一息入れようか?コーヒーでいいか?」
「あぁ」
手の速度を落とさず、ソルはどんどん書類の山を減らして行く。カイはそんな男を見直していた。ソルは今回のように物事を頼まれた時や、敵と対峙した時なども、一切のやる気を見せなかった。能力があるのにも関わらず、率先して動かないのである。それがシャンパーニの塔攻略辺りから変化があり、現在は王としての職務を真面目にこなしているのだ。カイは嬉しそうに笑った。
寝室の書類の山がなくなる度に、大臣は各部署を動きまわり、書類を掻き集めていた。が、それにも限界がある。問題が山積である外交関係の書類を回す訳にはいかないからだ。
「もう終わりか?」
余裕の体でニヤリと笑うソルのその能力に、大臣は蒼褪めた。書類が尽きてしまったのだ。だが、逆にこれが本物のロマリア王なら、どれほど強い国になるかとも、大臣は考えた。この数日、ソルは寝室に篭るだけではなく、城の警備の見回りや、城下町の治安にも目を配っていた。カイが言ったように、王としての責務をシッカリと果たしていたのだ。その為、兵士や国民から一目置かれる存在になっていた。
「何故…それほどの力がおありなのに……王よ…」
「アイツがうるさかったからだ」
「カイ殿…ですか。今、どちらに…?」
「徹夜明けで寝てる。これ以上の仕事が無いなら、俺も暫く眠る。ッたく、テメェも限度を考えろ。これじゃ割りに合わねェ」
ソルが大きな欠伸をしながら言った言葉に、大臣はホッと胸を撫で下ろした。作業に追われ、ソルがまだカイに手を出ししていない事を、即座に読み取ったのだ。お調子者の王様の補佐を勤める大臣は、苦労が多い分優秀だった。
「お疲れ様でした、ごゆっくりとお休み下さい」
言いながら頭を深々と下げ、その場を辞した後、大臣は最後の書類集めに奔走したのだった。

「よし、終了。ご苦労様、ソル」
「あぁ、坊やもな」
「疲れただろう?湯殿をお借りしようか。昨日覘かせて貰ったんだけど、凄く大きかったぞ」
カイが嬉しそうに風呂の準備を始めた。徹夜続きで多少感覚は鈍っていたが、今が夜だという事は分かる。
「あぁ、行こうぜ」
ソルはニヤリと口の端を上げて笑った。そうして、凝り固まった身体を解し、風呂からサッパリとして上がってきた。カイはベッドシーツを整え、いつでも眠れるように準備をし、ソルはそんなベッドの端に腰を下し、煙草を燻らせていた。
「もうそろそろ王の座をお返ししないと…私達の目的はここではないだろう?」
「あぁ」
「それじゃあ、明日カジノにいる前の王様に会いに行こう」
「その前に、やる事がある」
ソルの声音が低くなり、カイは手を止めて顔を上げた。煙草を焼き尽くすと、カイの顎に手を掛け、ソルは彼の唇を自分のそれで塞いだ。
「!」
何事かと、驚いて逃げを打つ身体を仰向けに押し倒すと、深く口づけた。拒絶して跳ねる身体を押さえ付けながら、巧みに着衣を乱していく。
「んん!……ソ、ソル!」
「暴れんな」
「嫌だ!放せ!!」
カイは力任せに男の胸板を叩いたり、腕をつねってみたり、必死にもがいた。だが、どうしてもその腕から逃れる事が出来なかった。カイは蒼褪めた。今までにも逃げ遅れて、こんな風にからかわれた事はあった。だが、その度に暴れて殴って逃げていた。逃げられていたのだ。
「今夜は逃がさねェ、大人しくしてろ」
しかし、それはソルが故意に逃がしていただけだった。今頃その事に気付いても遅い。カイは火照りだした身体に慄いた。その気にさせる術など、ソルは有り余るほど持っているのだ。
「カイ」
「あッ…は、放せ!」
耳元で名を囁かれ、カイの心臓が高鳴った。それでも快楽から逃れようと、必死にもがく。そんな彼の脳裏に黒髪のギアの言葉が蘇った。『もし、あの馬鹿から逃げ切れないと思ったら、どこででもキメラの翼を使え』と。ここは室内。どういう結果が待っているかは分かっていたが、カイは道具袋に震える手を伸ばし、キメラの翼を取り出して放り投げた。
「「!!」」
衝撃を覚悟して、カイはきつく瞳を閉じた。ソルは舌打ちし、そんな彼を庇った。ソルは強かに天井に頭を打ち付けた。ソルが頭を押さえて唸り、そんな様子を心配したカイは咄嗟に逃げ遅れてしまった。
「この、馬鹿が!!」
ソルの怒りに満ちた眼に、カイは竦み上がった。ガタガタと震えながら、ボロボロと涙を流した。
「……っ」
しまったと、ソルは渋面になった。ソルが怒鳴ったのは、怪我をしたらどうするのかと言う、彼の身を思っての事だった。だが、これは身体を強要しようとした男から逃れようとしての行動だ。それを責められれば、カイに逃げ道は無いのだ。
「…」
スッと僅かに身を引くと、カイが腕の中から震える身体を引き摺り、キメラの翼を持って逃げ出した。扉に辿り着き、ノブを回すが開かない。カイは泣きながら、ドアを何度も叩いた。背後で衣擦れする音が聞こえ、カイは他の逃げ道を探した。窓がある。萎縮して上手く動かない身体で、窓に向かおうとしたが、大きな手に腕を掴まれた。
「い…嫌だ…」
「…悪ぃ。もうしねェ」
「…う…、ご、ごめん…、今日は…アリアハンに、帰る…」
怯えるカイの腕を、ソルはかなりの未練を残しながら、そっと放した。自由になったカイは迷わず窓から身を躍らせると、キメラの翼を放り投げて、ソルの元から逃げて行った。
「……カイ」
ソルはカイの消えた窓を見つめ、苦渋に満ちた呟きを零したのだった。

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シャンパーニの塔 Lv.?~ロマリア Lv.??

「しつこい奴らめ!やっつけてやる!」
カンダタ、カンダタ子分×3との戦闘に、再び突入。攻撃もそれほど食らわなくなり、回復が余裕で出来るまでに、二人は強くなっていた。
「よし、これなら勝てるぞ!」
カイがチェーンクロスを振るいながら、ソルを振り返った。
「クックック、覚悟は出来てんだろうなぁ?」
勇者が凄絶な笑みを浮かべている。カイは竦み上がった。カンダタは竦み上がった。カンダタ子分×3は竦み上がった。
「ククク、クックックック…」
勇者は笑っている。カイは竦み上がっている。カンダタは竦み上がっている。カンダタ子分×3は竦み上がっている。

カンダタ達をやっつけた!

「まいった!金の冠を返すから許してくれよ!な!な!」
『はい』or『いいえ』
とりあえず、『いいえ』を選んでみる。
「そんな事言わずにさ。許してくれよ!な!な!」
覆面がじっとりと汗ばんできている。ソルはフンと鼻を鳴らした。
「プログラムに支配されてる…か。まぁ、いいだろう。俺もこの後用事がある」
「ありがてぇ!あんたの事は忘れないよ。じゃあな!」
金の冠を置いて、カンダタは子分を連れて脱兎の如く逃走した。
なんと!金の冠を見つけた!ソルは金の冠を手に入れた。
「やったな、ソル。さ、ロマリアへ戻って、金の冠を王に返そう」
「あぁ」
塔から飛び降り、移動呪文を唱えて一行はロマリアにやってきた。どこにも寄り道せず、まっすぐに王の下まで向かう。
「おお!ソルよ!よくぞ金の冠を取り戻して来てくれた!そなたこそ、まことの勇者!一国の国王としても相応しい人物じゃ!と言うわけで、どうじゃ?わしに代わってこの国を治めてみる気はないか?そなたが『はい』と答えるだけで、すぐにでも王位を譲ろうぞ!どうじゃ?」
『はい』or『いいえ』
ソルがニヤリと笑った。この為に今まで嫌いな努力をして来たのだ。
「宜しい!ではこれよりソルがこの城の王様じゃ!」
王よりマントと杖を譲り受け、ソルがロマリアの王となった。
「新しい王様の誕生じゃ!ソル王万歳!」
と、大臣。
「ご立派ですわ、ソル様!どうかこの姫と共に末永く暮らしましょうね」
と、姫。
「新しい王様に敬礼!」
と、兵士。
「ふふ。カッコイイよ、ソル」
そして、嬉しそうにカイが笑った。ソルが口の端を上げて笑った。その笑みに良くないものを見た大臣が、ソルの腕を即座に掴んだ。
「さぁ、王様。仕事ですぞ」
「ぁあ?」
「この書類に目を通し、判を押して下さい!」
言いながら、大臣が大量の書類をソルに手渡した。そんな大臣の行動に驚いていた兵士達も、事訳をすぐに察したようだ。間を空けずにソルの仕事を増やす。そうして、良くやったと兵士を誉める大臣の後ろで、
「うわぁ、一国の王も大変だな。手伝うよ、ソル」
盗賊が善意でそう言った。大臣は慌てた。
「駄目です!これは王の仕事ですぞ!休む間も無く働いて頂かなくては!えぇ、それこそ徹夜で!!」
「そんな…ちょっと、待って下さい。私に出来る事なら何でもしますから、どうか手伝わせて下さい。ソルは疲れています。二人でやった方が早く片付きますから…」
誰の為にこんな事をしているのか、彼は分かっていないのである。大臣がダラダラと汗を流しだした。そんな大臣に一瞥をくれると、ソルは不敵な笑みを浮かべた。
「ククク、なるほど。面白い。いいだろう、やってやるぜ。徹夜で、な。坊や、これを寝室に運ぶぞ」
「え?うん」
「いけません!許しませんぞ!!」
「テメェに許してもらうつもりなんざねェ。黙ってろ」
こう言われては、返しようがない。だが、それでも狼の前の羊を放っておく事は出来ない。大臣はカイに直接訴えた。
「王の寝室とは言え、それほど広くはございませぬ。カイ殿には部屋を用意致しますので、そちらに…」
「お気遣い無く。部屋の隅でも借りられれば、私はそれで…」
「いいえ!!カイ殿も前の王様の願いを聞き届けて下さった英雄でございます!どうか、用意する部屋で……」
「ゴチャゴチャうるせェ、いい加減にしやがれ」
気の長い方ではない勇者が問答に飽きた。踵を返すと、寝室の方へ向かって行ってしまった。カイは蒼褪める大臣を安心させるように、ニッコリと笑い掛けた。
「大丈夫です。必ず終わらせますから、心配しないで下さい。王の責務を請け負ったのですから、きっとソルもそのつもりです。ただ、不慣れな所は皆さんに迷惑を掛けてしまうかも知れませんが…」
深々と頭を下げる盗賊は、ここにきても何も気付いていなかった。

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シャンパーニの塔 Lv.?

攻略レベルはとうに過ぎている。それでも勝てない、初のボス戦。
「ク、ククク、クックック、クッハハハ、ハッハッハッハッ、ア――――ッハッハッハッハッハッ!!!!!!」
止めの一撃を食らいながら、ソルが狂ったように笑った。この男がここまで笑うのは、珍しいを通り越して、奇跡である。
「ヒイィィィィィィイッ!!頭ぁ!!逃げやしょう!殺される!!」
「もう嫌だ!!怖い!!スゲェ怖いです、頭ぁ!!!!」
瀕死に追いやられても、明確な敵意、そして殺意を剥き出しにし、凄まじい殺気を放っているものだから、勇者を破った側のカンダタ子分達が恐れをなしてしまったのである。勇者、恐るべし。
「に、逃げたくても、オレ様達は、ププ、プログラムに支配されているんだッ!!どれだけおっかなくても、倒されるまで……耐えろ!!」
カンダタが震え上がりながら叫んだ。まるで早く倒して欲しいような言い方である。勇者、恐るべき男である。
これは、三度目の正直だった。
攻略レベルのLv.13に達し、まずは様子見でシャンパーニの塔に挑んだのだ。宝箱を取りながら、6F建ての塔を5Fまで難無く突破する事に成功した。5Fにはカンダタ子分が二人待機しており、
「おいっ!変な奴らが来たぞっ!」
「よしっ!お頭に知らせに行こう!」
対決するのかと思いきや、上階へ行ってしまった。
「各個撃破出来たら楽だったのに…」
「言っても仕方ねェ。追うぞ」
「はい」
やはり言葉の端々にやる気を滲ませる勇者。カイは頼もしいその背中を追った。盗賊は何も気付いていない。
階段を駆け上がり、6Fに辿り着くと、覆面の大男がいた。カンダタである。足元にいくつもの宝箱を置いている。その中の一つが金の冠である。
「良くここまで来られたな。誉めてやるぜ!だが、オレ様を捕まえる事は誰にも出来ん。さらばだ!わっははは!」
カンダタがそう言い終わると同時に、二人の足元の地面が消えた。
「「!!」」
落とし穴に、なすすべなく落ちていく二人。
「へぇ、やるじゃねェか」
「感心している場合か!追い駆けないと、逃げられる!!」
慌ててカイが駆け出し、心配要らないのだがと、ソルは余裕の体を崩さない。再び6Fに行くと、そこには宝箱もカンダタ一味もおらず、その先から階下に飛び降りたと見える。迷う事無く階下へ飛び降りると、その先でカンダタ一味を見付けた。
「しつこい奴らめ!やっつけてやる!」
カンダタ、カンダタ子分×3との戦闘に突入。
「あぁ!」
「くっ」
最上階に強敵が待つとは、良く言ったものだ。塔内の敵とは比べ物にならない。防御力の低いソルなど、ひとたまりもなかった。回復が間に合わないのだ。防御に徹すれば、負けるのは目に見えている。
「これが私が持つ最後の薬草だ!」
カイは薬草を使った。ソルのHPが回復した。
「馬鹿が!俺に使うヤツがあるか!!」
「はは、ごめん」
「カイ―――――――ッ!!!」
どこかで大型ギアと闘った後のような絶叫を上げられ、カイは苦笑した。
「まだ死んでないから…」
だがそれも束の間。圧倒的な力の差に、敢え無く敗退した。様子見できたのだから、これは予想通りだ。だが、
「おお、ソル!死んでしまうとは不甲斐無い!そなたの父、オルテガの名を汚さぬようにな。ではゆけ、ソルよ!」
アリアハン王のこのセリフは多少頭にきたようだ。カイの棺桶に一瞥を投げた後、ギラリと王を鋭く睨んだ。自国の王に暴言を吐く真似はしないが、威嚇はする。赤茶から赤、そして金に移り変わる瞳で、ニヤリと凄絶な笑みを浮かべた。その場にいた大臣や近衛兵達まで腰を抜かすほどの、凄まじい殺気だった。これでは、まだ暴言を吐いた方が可愛いだろう。フンと鼻を鳴らすと、ソルはカイを生き返らせる為に協会へ向かった。
「う~ん、見事にやられてしまったな…」
「予想済みだ。もう少しレベルを上げて行くぞ」
「うん」
そうして、レベルが一つ上がる毎に挑戦していたのだが、三度目にもなると、ソルの堪忍袋の緒が切れた。当然だ。この男にはある目的があるのだ。
「テメェ等!!次だ!!次で必ずその首掻っ切ってやる!!!この俺の手を煩わせた事、あの世に帰って後悔しやがれッ!!!!!」
まるで手負いの獣の唸り声。腹に響くような肉食獣のそれに似ていた。そうして焔を撒き散らしながら吼える男に、カンダタとその子分達は震え上がった。そんな四人の目に、崩れ落ちる男の陰に、翼を生やした異形が見えた。ような気がしたのだった。
勇者、怒らすべからず。

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カザーブ Lv.11~シャンパーニの塔 Lv.13

路銀を稼ぎ、カザーブでの装備は完璧に整えたのだが、ソルの強さが攻略レベルに達していなかった。勇者の成長は誰よりも遅いのだ。
「もう少し北か東に行くと、敵は強くなるけど、経験値は沢山手に入るぞ?行けそうなら行こう。それから、この後に出てくる武器防具の値段も高くなるし、今の内にお金も貯めておこう」
カイは真面目に旅の計画を立てているようだ。その隣で、ソルはある目標を目指して黙々と敵を倒していた。
「あぁ。サッサと冠を取り返して、ロマリアに持って行くぞ」
珍しく積極的な勇者のセリフに盗賊は驚いたが、嬉しそうに笑みを深めた。他力本願全開のロマリア王やその国の住民に好感は持てなかったが、それでも人助けの為に動くソルを見直したのである。
「ふふ。頑張ろう、ソル」
「クックック、あぁ」
楽しそうなカイの隣で、ソルがニヤリと笑った。勇者は何かを企んでいるようだ。

そうして、何度かの『勇者一行、志半ばで死亡』を繰り返しながらも、どうにか攻略レベルには達する事が出来た。だが、それは四人揃ってのレベルである。
「どうする?初のボス戦だし、試しに行ってみようか?」
「あぁ、感じを掴めたらそれでいい」
「それじゃあ、お金を預けにアリアハンへ戻ろう」
「……しゃあねェな」
渋々と言った様子で、ソルが移動呪文を唱えた。二人とも、着実に強くなっていっているのである。
銀行に金を預けた後、ソルが家へ戻ると、母親が大鎌を取り出して威嚇した。
「何をしに来た」
「休みに来たんだ」
「宿屋に泊まれ!」
「自分の家があるのに、宿に泊まる意味が解らねェ!!」
いい加減にしろと、ソルもどこからか焔をまとった剣を取り出した。
「ただいま戻りました。母上殿、今晩の宿をお借りに来ました」
深々と頭を下げるカイに、
「ゆっくりと休んでいくといい」
母親は夕食の準備を始めた。
「ぐれるぞ、テメェ!!」
「あぁ、どこにでも行け!!」
「ふふ、喧嘩するほど仲がいいとは本当ですね」
武器を取り合う二人を前にしても、カイは羨ましそうにしていた。
「やれやれだぜ」
「…ふん、仕方あるまい」
そんな彼の前では、言い合う気力も萎えると言うものである。

ソルを祖父の部屋へ追いやり、荷物の整理をしているカイに母親が尋ねた。
「次はどこへ行くのだ?」
「シャンパーニの塔です。カンダタと言う者から金の冠を取り戻して、ロマリア王に返さなくてはならないのです」
「……ロマリア王に…?」
「え?えぇ、そうです」
母親の表情が険しいものに変わり、カイは怪訝な顔をした。何か問題でもあるのかと、カイは事の経緯を簡単に説明した。
「なるほど。では、ロマリア王がお調子者だという事は知っているか?」
「いいえ。それが何か?」
「…私の考え過ぎかも知れんが、お前に被害が及ばねばいいのだが……」
「??」
首を傾げるカイに笑みを誘われつつ、母親は厳しい口調で言った。
「もし、あの馬鹿から逃げ切れないと思ったら、どこででもキメラの翼を使え」
「で、でも…室内では…」
「構わん。使え」
「…はぁ」
母親は何かに気付いたようだ。そんな母の忠告を理解出来ずにいたカイだが、この言葉を心に留めておく事にしたのだった。

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カザーブ Lv.11

ロマリアを少し北に行くと第一のすごろく場があるのだが、寄り道したがった勇者を引き摺り、盗賊はその先のカザーブの村へ向かった。
「道具屋に毒針があるそうだよ。昼間は店主が邪魔で宝箱が取れないから、夜になったら取りに行こう」
「それは構わねェが、盗賊が板に付いてきたな」
「………言うな」
雷を放つ勢いの盗賊に両手を上げて降参すると、ソルは武器防具屋へと向かった。ロマリアで完璧に装備を揃えていた事もあり、後少し路銀を稼ぐと最強装備になる。多少値が張る勇者の防具、鉄の鎧と、盗賊の武器、チェーンクロスを先に購入し、二人とも装備出来る鱗の盾は後回しにした。道具を整理しながら、カイは少し離れた所で煙草を燻らせるソルに視線を投げた。眉根を寄せ、何かを考えているようだった。
「…ソル?」
「終わったか。他に買う物は?」
「え?今の所は大丈夫。後はお金を貯めて、盾を買えば全部揃うよ」
「そうか」
煙草を焼き尽くし、ソルは先に立って歩き出した。いつもと変わらないような態度であるが、カイは違和感を覚えていた。
それはすぐに訪れた。恐れていた事が起こったのである。
「ちっ!」
「ソルッ!!」
カイが薬草を使った。ソルのHPが回復した。
「大丈夫か?行くぞ!」
盗賊がチェーンクロスを振るい、華麗に敵を倒していく。
「調子に乗りやがって!」
勇者のセリフとは思えないセリフを吐き、ソルは鉄の槍で敵を貫いた。極稀にしか出さない会心の一撃である。
「……くそ、またか…」
敵を全滅させた後、密かにソルは舌打ちした。勇者の防御力が盗賊よりも低くなると言う、以前と同じ症状が出だしたのである。その分HPは高いのだが、最前線に立っているソルは敵の攻撃を受け易い。防御力が低いのは致命的である。
「ソル、大丈夫か?」
「…あぁ…」
打開策を思案する男の横顔を、カイが不安そうに見上げた。そんな彼の頭を、安心させるようにポンポンと軽く叩いてやり、
「坊やを前に出すような馬鹿な真似はしねェが、こりゃ相当レベルを上げて行かねェとキツイだろうな」
珍しく男が苦笑した。敵の攻撃を耐え切れれば、次のターンはカイが誰よりも早く行動してくれる。先程もそのおかげで致命傷は免れたのだが、素早さを下げる呪文を使ってくる敵もいるのである。ソルは呪文に掛かり難いのだが、カイは違う。回復が後手に回ってしまうのだ。更には複数回攻撃してくる敵や、痛恨の一撃を出してくる敵も出現してきている。現状は厳しかった。
「…殺られる可能性も、回数も、これから格段に上がる。覚悟は出来てるか?」
「焦る事ないって私に言ってくれたのは、ソルだろう?最後まで二人で行くと決めたのなら、私はそれに従うよ」
まっすぐにソルを見上げるカイの言葉は、揺ぎ無いものだった。
「…」
まだ夜の帳が降りるには多少早い、夕暮れ。だが、カイは身の危険を感じた。時折男から感じる、背筋の凍るような気配。その直感にカイは即座に従った。
カイはキメラの翼を使った。アリアハンへ戻ってきた。
「テメェッ!何してやがる!」
「もう体力も魔法力も無いだろう!休憩だ!」
「道具が残ってんだろうが!勝手な事してんじゃねェ!」
「馬鹿!路銀稼ぎしてるのに、無駄に道具を消費してたまるか!」
言い合う二人に近付く者がいた。
「エグゼビースト!」
「おぁ!」
突如地面から現れた使役獣に脚を咬まれ、ソルの動きが止まった。振り返ると、黒髪のギアがそこにいた。ホッと安堵の息を吐き、カイは微笑んだ。
「母上殿、ただいま戻りました」
「ふん、そんなヤツの母親など御免だが…まぁ、いいだろう。良く無事に帰って来た。危ないと思ったら、すぐに戻って来るといい」
「えぇ、すみません。助かります」
「疲れただろう。ゆっくり部屋で休め」
脚を咬み付かれたままの勇者をその場に残し、母親は盗賊を連れて家へ向かったのだった。
「……ヘヴィだぜ」

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ロマリア Lv.10

洞窟内の宝箱で手に入れた金や、盗賊が戦闘中に敵から奪った防具などを売り捌いて温かくなった懐のおかげで、ここロマリアでの装備は完璧だった。鉄の槍を装備したソルは、今まで装備していた棘の鞭をカイに手渡した。
「おらよ、次からは坊やがグループ担当だ」
「あぁ、任せてくれ」
「…」
「何?私、変な事言ったか??」
怪訝な顔をした勇者に、盗賊は首を傾げた。おかしな事を言った覚えはない。
「いや、少しは成長したようだな…」
「は??」
「クック、何でもねェ。セーブしに行くぞ」
「あ、ちょっと…、待て!お会計まだなのに!」
城へと歩き出した勇者に盗賊は慌て、急いで金入れを出して会計をしている。そんな彼を肩越しに見やり、ソルは口の端を上げた。
重い武器や防具を装備出来ない盗賊は、どうしても勇者よりも攻撃力や防御力が低い。その事に関して、カイはずっと不安を抱いていた。足手まといになっていると悩み、己の力の無さを嘆いていたのだが、どうやら吹っ切れたようだ。以前に諭した事を思い出したのか、自分に出来る事をやろうとしている。それが、どれほどソルの力になるか、恐らく今は気付いていないだろうが。
「もう、待てって!」
「ゆっくり行ってやってるだろ」
「そういう問題じゃない!」
「そうか」
珍しく楽しそうな男の様子に、カイは口を閉ざした。何故男の機嫌が良くなったのか、自覚が無いのである。まるで不気味なものを見たように、男からそっと一歩離れたのだった。
ロマリアの城に入った二人は、他のものには目もくれず、やはり王の下まで一直線に向かう。
「よくぞ来た!勇者オルテガの噂は、我らも聞き及んでおるぞよ」
そうしてセーブを取り、次へ向かおうと思っていたのだが、―――
「頼みがある!カンダタという者が、この城から金の冠を奪って逃げたのじゃ。もしそれを取り戻せたなら、そなたを勇者と認めよう!さあ、ゆけ!ソルよ!」
こちらの返事を聞く気など毛頭無い、つまり、頼みという名の命令を下されてしまった。
「…別に、テメェに勇者と認めて貰いたい訳じゃ…」
「スタンエッジ!!」
「うお!?」
「失礼致しました。では…」
恭しく頭を下げ、カイはソルを連れて踵を返す。その背中に、
「どうかわが王の頼みを聞き届けて下され!」
大臣が悲痛な声を掛けたのだった。

北のカザーブの村から西にあるシャンパーニの塔に、カンダタが子分を集めて住んでいると言う情報を城内で手に入れると、二人は城下町まで戻って来た。
「やれやれ、どういうつもりだ?」
ソルはカイを振り返り、尋ねた。禁断の手を使ってソルの言葉を遮ったのだ。王に向かっての暴言以外に、それ相応の理由があると見ていた。
「この国自体が平和ボケしているのは別にして、冠を取り戻す以外に私達に行く所はないんだ。ここから西に行くには魔法のカギが必要。魔法のカギがある東に行くのは、敵が強くて自殺行為。北のカザーブの村に行って装備を整えた後、冠を取り返しにシャンパーニの塔に行って、レベルを上げるしかないんだ。最北のノアニールの村に行くにしても、敵が強くなるから攻略は不可能だ」
地図を広げて説明するカイの言葉に黙って耳を傾けていたソルが、口の端を上げて笑った。
「良く調べてんじゃねェか」
「勇者の共を務めるのだから、これくらいは当然なのでしょう?」
「あぁ、上出来だ」
勇者の満足そうな表情に嬉しそうに笑うと、カイはピッと人差し指を立てて自分の口を指した。声を潜めると言う意思表示だ。
「私だって、この国の王や、城の兵士に文句の一つも言いたいんだぞ」
「あぁ、分かってる。俺に付き合う坊やも大変だな」
言いながら、城下町を抜けようとソルが歩き出した。からかう様な口調だったが、それは労いの言葉だった。
「……っ。馬鹿、勇者の方が、ずっと大変じゃないか」
勇者の肩の荷を思いながら、カイは北へと向かう逞しい背中を追ったのだった。

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いざないの洞窟 Lv.8~ロマリア Lv.10

単独とは一つだけ、一人きりという意味である。
「ソル!知っていたのなら、何故言わないんだ!!」
カイが血相を変えて叫んだ。
「言ってやっただろ、さっき」
ソルが口の端を上げて笑った。仲間割れをしている暇など無い強敵が相手なのだが、それでも二人の勢いを止められる者などいない。
ここはいざないの洞窟。アリアハン東地方に位置する洞窟である。ここに出現する厄介な敵、魔法使い。その名の通り、呪文を使ってくる強敵だ。この敵に関する情報が間違っていたのである。いや、間違いとは語弊があるだろうか。全ては出てくる確率の問題であり、即ち運。序盤では単独で出てくる事が多いと記述されているのだが、ここでは最大四体までが群れて出てくる時があるのだ。結局は彼等の運が悪いのである。
「何度群れと遭遇していると思っているんだ!これじゃ、洞窟を抜ける前に薬草が無くなるぞ!!」
「いいじゃねェか、その時は俺が介抱してやるよ」
性質の良くない笑みを閃かせる勇者に、盗賊は背筋を凍らせた。
「斯くなるうえは……神よ、お許し下さい!これも私の身の安全の為!!」
魔物の群れをやっつけた。カイは薬草を盗んでいた。
「…テメェ、それでも…」
「うるさい、先を急ぐぞ」
意地悪な勇者である。それでも、前線に立ってカイをちゃんと守っているのだ。からかわれているだけなのだろうが、冗談なのか、本気なのか、良く分からない時がカイにはあった。勿論、勇者の狙いはただ一つであるのだが。

無事に洞窟を抜けてロマリア・カザーブ地方へワープして来た二人を待ち受けていたのは、強いザコ。新大陸に移って来ただけあり、敵も強くなっていた。
「ま、俺達のレベルが攻略レベルに追いついたって事もあるか…」
メダルと交換した棘の鞭を振るい、見事に敵を倒していくソルは、それでも余裕の体を崩さない。
「…あぁ、気を張るだけ損なのだろうか…?」
「どうした、坊や?気の抜けた顔して…」
「どんな状況でも余裕のあなたが羨ましくて…。私などがサポートしなくても、大丈夫じゃないですか…」
シュンと落ち込んでしまったカイの様子に、ソルは眉間に皴を寄せた。多少強くなっていたり、面倒な呪文を使ってきたりするだけで、命に関わるような怖い敵ではない。それはカイがいるから言える事なのだが、どうもからかい過ぎて自信を無くしてしまったようだ。失敗したと頭を押さえ、ソルはロマリアの城下町へ向かった。
カジノへ連れて行って、気晴らしでもさせようと思っていたのだが、その必要が無くなる出来事が起こった。道を尋ねようと、ソルは男性に声を掛けたのだが、先手を打った男性が口に出した言葉が、
「これは噂ですが…やがてアリアハンの勇者がやってきて、魔王を退治してくれるそうですよ」
だった。そんな事を聞きたかった訳ではない。呆れ返るソルの隣で、カイが顔色を変えていた。今にも説教モードに入りそうだった彼を引き摺り、場所を移動した。
「なんて他力本願な!人事だからと言って、簡単に考え過ぎではないのですか!!魔物が強くなっている現状に危機感を持たないなんてっ!!」
まるで自分の事のように憤慨する彼に、フッとソルの顔に笑みが浮かんだ。
「何が可笑しいのです!あなたの事でしょう!!」
「あぁ。坊やもちゃんと考えてるみてェだな、安心した」
「…っ!」
カァッと顔を赤くし、カイが口を噤んだ。言外に、同じ事を考えていたと言う事をすぐに察したようだ。
「装備整えに行くんだろ、行くぞ」
満足そうに笑みを浮かべる男を追い駆けながら、素行は悪いが、それとは裏腹な思慮深さに改めて触れて、カイは沈んでいた気持ちを切り替えた。

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ナジミの塔 Lv.4~いざないの洞窟 Lv.8

勇者一行の旅の順序は以下の通り。
まず、盗賊バコタの作った盗賊のカギを、ナジミの塔の老人から受け取る。次にレーベの村にて、そのカギが無くては開かない扉の家の老人から、魔法の玉を受け取る。その魔法の玉を使えば、いざないの洞窟の旅の扉の封印が解ける。

「つまり、ジジイ二人が先行して封印を解けば、話は早いじゃねェか」
情報を洗っている最中に、ソルが面倒そうに言った。禁句を。
「今のは聞かなかった事にしてやるから、先を急ごう」
「…」
サッサと歩いて行く盗賊の後を追い、勇者はやる気のない溜め息を吐いた。ここはナジミの塔。盗賊バコタからカギを盗った老人に会いにきたのだ。最上階の部屋に、居眠りをしている老人がいた。
「おお、やっと来たようじゃな。そうか、ソルというのか。わしは幾度となくお前にカギを渡す夢を見ていた。だからお前にこの盗賊のカギを渡そう。受け取ってくれるな?」
『はい』or『いいえ』。
「ここで『いいえ』と答えるバカがいるのか?」
そっと老人に聞こえぬように耳打ちするソルに、カイは思わず吹き出しそうになってしまった。結局はカギがなくては先に進めないのだから、拒否する理由が見当たらない。そんな二人をよそに、老人は話を進めていく。
「ところでソルよ。この世界にはそなたの性格を変えてしまうほど、影響力のある本が存在する。もしそのような本を見つけたら、気をつけて読む事じゃな。ではゆくがよい、ソルよ。ワシは夢の続きを見るとしよう」
そう言うと、再び船を漕ぎ出した。本棚から拝借した本をそのまま道具袋の底へ突っ込み、ソルはカイを連れてサッサと移動した。次はレーベで魔法の玉の研究をしている老人だ。
「ん?なんじゃ、お前さんは?わしの家には鍵を掛けておいたはずじゃが、どうやって入ってきた?」
『はい』or『いいえ』
「……答えになってねェんだが…」
ご尤も。
「なんと!それは盗賊のカギ!すると、お前さんが勇者オルテガの…!そうじゃったか…。であれば、これをお前さんに渡さねばなるまい」
ソルは魔法の玉を受け取った。
「…それでもアイテムをくれるのだから、有り難く貰っておきましょう…」
「あんま深く考える必要ねェか」
「えぇ」
耳打ちし合う二人をよそに、老人は話を進めていく。
「その玉を使えば旅の扉への封印が解けるはずじゃ。海の向こうの国々ではアリアハンからの勇者を待ち望んでいるはずじゃ。是非とも彼等の助けになってやって欲しいのじゃ。気を付けてゆくのじゃぞ」
魔法の玉を持って、ソルは島の東部。いざないの洞窟へと向かった。
「ソル、母上殿に挨拶に行かなくてもいいのか?」
「面倒臭ェ」
「…でも…」
「いいから行くぞ」
木々に囲まれた泉のほとりに、地下へと続く階段があった。その下には入り組んだ洞窟が広がっているのだが、その前に封印の石壁を突破しなくてはならない。ここで必要なのが魔法の玉だ。ソルは魔法の玉を石壁にセットした。すると、大きな轟音を響かせて壁が崩れ落ちた。
「あれ?あんな所に宝箱がある」
崩れた先の通路に置いてある宝箱を、カイが目敏く見つけた。さすが盗賊である。ソルは宝箱を開けた。
「ん?蓋の裏に文字が書かれてるな」
『アリアハンより旅立つ者へこの地図を与えん。汝の旅立ちに栄光あれ!」
ソルは不思議な地図を手に入れた。
「……ま、有り難く貰っとくか」
「えぇ、深く考えてはいけません」
地図を道具袋の中へ入れると、ソルはカイを振り返った。
「敵の情報は?」
「大丈夫、頭に入ってるよ」
即答に、ソルは満足そうに目を細めて笑った。
「そうか。一つ言っとくが、魔法使いは単独で出て来る事が多いとか書いてただろ。それ、あんま信用すんな」
「えっ!?」
「ククク、行くぞ」
「……う、うん」
余裕綽々の勇者の背を、盗賊は道具袋の薬草の数を数えながら追うのだった。

レーベ Lv.2~ナジミの塔 Lv.4

勇者が生まれ育ったアリアハンから北に向かうとレーベの村がある。路銀稼ぎの場をレーベ周辺に移し、せっせとモンスター退治に励む勇者と盗賊。
「既にナジミの塔攻略レベルに達しているのに、どうしてこんなに装備が揃わないのだろう?」
後少しで十分な装備が揃えられる所まできて、カイはこの現状に首を傾げた。
通常はLv.4で攻略出来る塔だが、それは四人揃っての数字である。二人で攻略しようと思うと、単純計算して、その倍のLv.8が必要なのだが、それも既に達している。
「安全策を取ってるからだ。無茶していいなら、狩場をもっと東に移す。多少敵が強くなるが、今よりも金は多く手に入るぜ。それか、塔に続く洞窟内部の宝箱を探すかだ。行って戻って来るだけの体力がなければ無理だが…。ま、残金を考えると東に行った方が早いか」
煙草に火を点け、ソルがカイの疑問に答えた。つまり、ハイリスク、ハイリターン。ソルが『安全策』を取る理由はただ一つ。回復呪文を使えるのが、勇者のみという事だ。
「…体力の事ならもう心配いらない。もう少し東に移ろう」
余りの体力の低さに弱音を吐いてしまった為に、ソルが思い切った行動に移れなかったのだと、すぐにカイは思い至った。だが、レベルが上がってくると、自然と体力も付いてくる。ソルよりかは低いが、既に不安要素ではなくなっていた。
だが、―――
「だから、敵が強くなると言っただろう!」
敵を叩き斬りながらソルが吼えた。催眠の呪文で眠らされ、幻惑の呪文で命中率を下げられ、更には仲間を呼ばれて敵が増えていく。それで無くとも多勢に無勢。ピンチはすぐに訪れた。
「だって、魔法を使ってくるとは思わなかったんだ!」
「馬鹿が!向かう先の敵の情報くらい頭に叩き込んでおけ!!」
痛烈な指摘に、カイは口を閉じた。反論の余地がないからだ。何故ソルが動かなかったのか、もっと考慮するべきだったのだ。己の落ち度である。
「……すみませんでした…」
素直に謝罪するカイを肩越しに振り返り、ソルは口の中で短く呪文の詠唱に入った。カイよりも魔法力の落ちるソルでは、呪文を覚えられるのが多少遅い。
「逃げるか、叩き伏せるか、どっちだ?」
使えるようになった回復魔法を掛けてやり、尋ねた。戦況を立て直す事に成功すれば、後は闘いの見極めだ。それをカイに委ねたのである。
「倒します」
即座に答えるカイの表情に、ソルは満足そうに口の端を上げた。二人とも幻惑の呪文に掛かっており、命中率を下げられていた。カイに至っては力が弱い上に、武器が初期装備の為、一撃で敵を倒せない。それでも、勝機を見出し、出した答えだった。
「催眠の呪文を使う敵を倒した後は、仲間を呼ぶ敵を任せます!」
「上等だ」
厄介な敵さえ先に叩いてしまえば、それほど怖い相手ではない。それを一戦交えただけで見極めたのだ。ソルから見れば、一戦交える前に知っていて欲しい事であるが、済んでしまった事を言っても仕方がない。適応力と判断力さえあれば、それでいいのだ。二人は同時に地を蹴った。
「手の内は仕舞いか」
「今回は私の勝利ですね」
長引いた戦闘だったが、深手はない。そして、その戦闘に見合う金が懐に入った。カイは金入れを確認すると、ソルを見上げた。
「これで装備が整います。塔へ向かいましょうか」
「その前に…」
「分かっています。敵の情報を調べるのでしょう?」
「クックック、分かってるならいい」
カイの頭をポンポンと叩き、ソルは歩き出した。カイはそんな頼りになる勇者の背中を追い駆けるのだった。

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アリアハン Lv.1.5

「くっ、回復しなくては……って、あれ?薬草が…ない」
あと一撃食らえば、戦闘不能に陥る。カイは血の気が引く音を聞いた。
「おらよ」
ソルは薬草をカイに使った。カイの体力が回復した。この機を逃すものかと、敵が攻撃してきた。通常は四人体制なのだ。敵の数もそれ相応の数が出てくる。つまり、多勢に無勢の状況だ。だが――
「調子に乗りやがって!」
「させません!」
脚を活かして必ず先制を取るカイと、その一撃で敵を葬るソルの素晴らしい連携で、見事敵を撃破した。二人の前に立ちはだかるもの無し。
本来なら四等分される経験値も二等分。レベルが上がるのは早いのだが、勇者は基本的にレベルが上がるのが遅い。
「…」
ソルよりもレベルが高くなったカイは、その能力の差に顔を曇らせた。
「どうした?」
「いえ…」
「何でもないって面じゃねェぞ」
先手を打たれ、カイは言葉に詰まってしまった。図星であるという事だ。やれやれと言った風に懐に手を伸ばすと、ソルは煙草を取り出した。
「何が気に入らねェ?」
「気に入らないとか、そういうのではなくて…」
もごもごと言い難そうにしているカイの言葉を、煙草を燻らせながらソルは待った。そんな態度に、カイは観念したようだ。
「ただ、あなたの体力が私の魔法力で、あなたの魔法力が私の体力だと…気付いてしまったものですから…」
「ぁあ?」
「つ、つまり……戦闘での魔法を使えないのに、魔法力ばかり強くて……ちっともあなたの役に立てていないと…そう、思ってしまって…」
そう言って、カイが俯いてしまった。言われて確認してみると、確かにそうなっている。彼の攻撃力もほぼソルの半分だった。そんな事かと、ソルは小さく嘆息した。
「そ、そんな事とは何だ!二人しかいないのに…足手まといだなんて…」
俯いて悔しそうに唇を噛むカイの顎に手を掛けて上を向かせると、ソルは紺碧の瞳を見据えて言った。
「俺には坊やのような脚はねェし、呪文もそう多く使えねェ。カイ、焦るな。今は満足な武器も揃えられねェし、呪文も使えねェだろうが、後々必要になってくるんだ。俺に無いもんを、お前が持ってんだろうが。シッカリしやがれ」
「!」
言い終わり時に、そっと触れるだけのキスを落としていった男に、カイは顔を真っ赤に染めた。
「ククク。おら、先行くぞ」
「あ…は、はい!」
背を向けた男を、カイは頬を朱に染めたまま追い駆けた。

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アリアハン Lv.1

16歳になる誕生日の事であった。
「起きなさい。起きなさい、私の可愛いソルや」
「?」
ソルが目を開けると、目の前に黒髪の…ギアがいた。
「嫌らしい目で私を見るな」
「…セリフが違うだろ…」
「くっ…何故私が貴様の……は、母親役など…っ!」
黒の長髪を持つ者は、どこぞの吸血鬼の伴侶と、気弱な青年にくっ付いている悪霊と、彼しかいない。どうやらくじ引きで当たってしまったようだ。
「サッサと起きて、サッサと城へ行って、サッサとこの町を出て行け」
そう言うと、母親役は扉付近へ移動して行った。
「ヒデェ言われ様だな、オイ」
起き上がり、ソルは設置してあるタンスを調べた。なんと、力の種を見つけた。ソルは力の種を手に入れた。
「こういうゲームってのは、人ん家に入って好き勝手に……」
「それ以上言うな。全て暗黙の了解だ」
「…そうか?」
「そういう事にしておけ。それよりもサッサとしろ。貴様が逃げぬように、城まで監視する」
母親のセリフとは思えないセリフを吐く母親役である。こうして引き摺られるように、ソルは強制的に城まで連行された。
「ここからまっすぐ行くとアリアハンの城だ。王に挨拶をしに行け。ここで引き返すと、性格が変わるぞ。気を付ける事だな」
「あぁ、失敗済みだ。ッたく、ウゼェ…」
せっかく一匹狼の性格と、高い基本能力を身に付けたのだ。ここで引き返すような馬鹿な真似は一度で十分である。兵士達の目の前を素通りし、一直線に王の下へ進む。
「よくぞ来た!勇敢なるオルテガの息子ソルよ!~~物凄く長いのでカット~~ソルよ、魔王バラモスを倒してまいれ!しかし、一人ではそなたの父オルテガの不運を再び辿るやも知れぬ。街の酒場で仲間を見つけ、これで仲間達の装備を整えるが良かろう」
ソルは50Gと武器、防具を受け取った!
「ではまた会おう!ソルよ!」
一人、捲くし立てるだけ捲くし立てて王は満足そうだが、ソルは凶暴な笑みを浮かべていた。言ってやりたい事は山ほどあるが、それを口に出す愚か者ではない。目で威嚇するだけ威嚇すると、そのまま黙って踵を返し、一直線に城を出た。すると、お役ご免とばかりに黒髪のギアは姿を消していた。ソルはその足で仲間を求めてルイーダの酒場へと向かった。
お勧めのパーティ編制なんぞ、右から左。求める者はただ一人だ。
「盗賊のカイです。これから宜しくお願いします」
「堅苦しい挨拶なんぞ今更無用だ。行くぞ」
安全策の僧侶だと姿が不細工な上、役立つ景品と交換出来るメダルを探せないのである。メダルを手に入れる為には、盗賊の能力が不可欠なのだ。そして、色々敵から道具を盗んでくれるのだ。序盤は結構役に立つ能力である。
「ちょっと待て、装備も整えなくてはいけないし、薬草は沢山いるぞ」
「あぁ、任せる。これが餞別だ。一国の王にしてはしけてやがるがな」
王様からもらった武器と防具は、こん棒が二つと、ヒノキの棒、旅人の服が一つずつ。ソルの言葉通り、武器防具屋で装備を整えようにも、懐が寒すぎて一人分の装備も整えられなかった。まずは路銀を稼がなくてはならないのである。
「16歳の少年に魔王を倒せと言う割りに、余り期待していないのだろうか…?逆に疑ってしまうな…。はっ、いいえ、何でもありませんよ!」
「クククッ、暗黙の了解だとよ。気にするな」
慌てふためく盗賊の隣で勇者は楽しそうにしている。
仲間を連れて行くとはいえ、こんな大役を任される勇者が背負う荷は重い。
『私が全力でサポートしなくては!』
そうして盗賊は決意を新たにした。
魔王だろうが、何だろうが、倒せない敵などいない。どれだけ時間が掛かっても、諦めなければ必ず倒せるものなのだ。即ち、長い旅になる予感。
『さて、いつ喰うか…』
真面目に旅の計画を練る盗賊へ視線を投げて、勇者は口の端を上げて笑った。

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睡眠不足です/流

月末の週は必ず寝不足になりますな。
しかも、金曜当番に当たっていたと言うのが痛かったのです。
えぇ、無事に終わりました!これでゆっくり眠れる!!
ホントに気を失って仕方が無い。また机に向かって撃沈でした;;
春眠暁を覚えず…には早いと思うのですが…??
こんな日は残業しても捗らないと判断し、サッサと帰って来ました。
それもこれも、明日の当番がNo,1だからです。土曜日の仕事をキッチリとこなして下さるので、本当に助かるのです。当前の事だと思うでしょう?手を抜く人は抜くのですよ。それは全て流の休み明けの仕事に掛かってくるのです。
だからNo,1が当番の時は、仕事を置いて帰れるのですよ。えぇ、本当に頭が下がります。ってか、見習います!!

拍手絵、騎士ソルに投票して下さいましたか?(笑)
何故ここまで悪人面にしたかと言うと、現在の旦那との差を明確にしたかったからだと思うのですよ。
えぇ、たった5年程度でここまで丸くなるものか!と感心してしまいます。
さすが、嫁!!!
あ、騎士ソルとソルの組み合わせだとカッコイイかなぁ…。
何故ここで流がポツポツと言っているかと言うと、一応ここの管理人みたいなものとして、投票に参加していないからです。
無双とかBASARAとか、言いたい事は言ってますけどね。他ジャンルは却下になるって分かってるので(笑)
ただ、GGに関してはマジです!なので、同志を募っている訳です!!
集え、騎士ソルスキ――――っ!!!
そして、青ソル、赤カイスキ――――っ!!!
その他諸々スキ――――っ!!!(笑)
今からでも遅くはない、と思う…!!
って、脱線、脱線;;
参加して下さって有り難うございましたvv
そして、拍手して下さった方、有り難うございますvv
騎士ソルのあのセリフに萌えて下さったのでしょうかねぇ…?(笑)

さて、今日は気を失いつつお絵描き!&携帯版の更新を…

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危なかった…/流

先月の棚卸しは…昨日なんですけどね…凄く早く終わりましたよ。ビックリするくらい順調良く仕事が進み、凄い驚きの時間に帰宅出来たのです。
月末になると、出社した時に残りの仕事量を計算して、大体の帰り時間を予想する癖が付いているのですが、その予想より一時間半ほど早い帰宅でしたよ。疲れていたのか、眠気には負けてしまいましたけどね。
それも全ては、No,1にスムーズに動けるようにして頂いたからなのですが…。
そうして手伝って頂いていると思うと、もう無理、絶対無理と、諦めそうになる心に歯止めが掛かり、逆に奮い立つのです。
これくらいの事で弱音が吐けるかぁ―――――っ!!!!
負けるか、コンチク(以下略)!!!!!(笑)
……えぇ、No,1は流の性格を良く掴んでいらっしゃる…
たまにボスと呼ばせて頂いております。サル山のボス猿みたいで嫌だと言われてしまいましたが……ボス、確かに…(笑)

拍手絵のリクエスト有り難うございますvv
ムック表紙絵のような騎士ソル希望……見ましたか?あの悪人顔(裏表紙に関しては敢えてノーコメントで…/笑)
やっぱり旦那は嫁さんのおかげで丸くなっていますよねvv
表情も穏やかだし、セリフも優しいし…
そうそう、対カイの旦那の勝利セリフ。いつも見逃していたのですが、凄い嬉しい事言ってくれているじゃありませんかvvようやく嫁さんと向き合いましたねvv良くやった!もう少しだ、頑張れ旦那!!これからが男の見せ所だ!!!(笑)
いやいや、騎士団時代でも嫁さんに対しては優しいですよねvv
必ず目に入るくらい気に掛けているし、こっちが赤面しそうなセリフまで吐いているじゃありませぬか!!えぇ、全てにおいて深読み希望!!!(笑)ねぇ、口では適当な事言っているくせに、ちゃんと嫁さん守ってんじゃんvv
家庭版が出たらもっと堪能出来るのでしょうけどね…ゲーセン巡り…行きたいなぁ…
って、脱線して行ってる(笑)
沢山の拍手も有り難うございました!!
元気出して頑張りまふ…!!
それから返事が遅くて本当にすみませぬ!!!
昨日は…昨日、も(笑)…ホントに寝てました。

さて、今日の出来事…

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